日々の恐怖 4月30日 白狐(10)
巫女さんは処女が務めるものだと思っていたし、生贄なんかも基本は生娘という知識があった。
処女じゃなくとも清廉潔白な人間が、神仏と関わるものだと。
当時の仕事も清らかなものではないし、生活は自堕落極まりない。
欲望と損得勘定で成形された私に、神様が付くとは到底信じられなかった。
小豆さんに、
「 情を寄せたからだよ。
綺麗、悲しい、寂しい、悔しいってそのお狐さんに向けて長年情を寄せた。
そこまで思われて悪く思う神さんはいない。」
と言われた。
「 それなら、他の神社とかには余り行かない方がいいんですかね?」
「 日本の神さんは結構大雑把だから大丈夫だよ。
でも大雑把で大らかだけど基本は嫉妬深いものだから、他所に信仰を向けるのはやめた方がいいと思う。」
「 そういうもんですか。」
「 君のお狐さんは、君と色んな所に行くのを楽しんでるように思う。」
その時点で日本中色々なところに行っていた。
そのすべてが同伴状態だったと思うと、なんだか少し恥ずかしくなってくる。
小豆さんに霊感があるのか聞いてみたけれど、
「 見える事も感じる事もないよ。
ただそう思うんだ。
その感覚はあんまり疑わないようにしてるだけ。」
と返された。
確かに小豆さんは見えるとかそういう言葉を使っていなかった。
一貫して、思うだった。
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