日々の恐怖 9月2日 識別 (3)
どうやらヤツは、相貌からその人の健康状態を推定し、というのではなく、いわば道端の占い師まがいの事をコンピュータにやらせるつもりらしい。
死者をサンプルに使う事には少なからず抵抗があったが、その頃の俺達は好奇心旺盛な奴らばかりだったので、すぐに手を付け始めた。
毎日毎日チマチマと写真、没年-撮影日=余命を入力していき、数週間でサンプル数は2000に到達した。
そして試験運用。
といっても、正解がわからないので、誤差計算もしようが無い。
最初に試したのは俺だった。
システムを起動し、カメラの前に立つ。
すぐに顔に照準が定まり、コンマ数秒の計算の後弾き出された答えは60だった。
” ふむ・・、男性の平均寿命が80代であることを考えると、いい線行ってるのでは・・?”
言い忘れていたが、俺達は皆20代前半で、リーダーだけ30代だ。
次々と他のメンバーも試してみたが、やはりサンプルが少なかったのか答えはバラバラだった。
23、112、75、42、と結構無茶苦茶な答えばかりである。
一際強烈だったのがAで、なんと余命0年を宣告されてしまった。
やはり、コンピュータに占い師の真似事をさせるなど、無理だったのかもしれない。
だが、手動で2000ものサンプルを打ち込んだだけに、このままお蔵入りとする訳にはいかない。
一晩、ログ自動生成モードにして会社のサーバーに保存されている様々な場所のカメラ映像を擬似的に読み込ませた。
翌日、コンピュータはしっかりと何千もの認識ログを吐いていた。
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