日々の恐怖 12月14日 新入り(1)
彼女は数年前、とある学習塾に勤めていた。
小中学生対象の、進学塾というよりは苦手補強のための塾だ。
田舎だったこともありのんびりとした雰囲気で、夏には肝試し大会、冬にはクリスマス会が催されるような、家庭的な塾だった。
職員は、塾長を含めた女性ばかりの四人。
女性同士の付き合いにありがちな面倒臭さも多少はあったが、和気あいあいとした雰囲気で、友人は気に入っていたという。
ある時、その塾に五人目となる職員が入ってきた。
友人より少し年上の、やはり女性だったのだが、この新入りがなかなかに曲者だった。
新入りは悪い人ではないこともすぐにわかったが、頓珍漢というか間が抜けているというか、やることなすことどこかズレており、失敗も多かった。
そのくせ、とにかく何でも知りたがり、首を突っ込んできた。
受け持ちでない授業や生徒のことだけでなく、塾で過去に起こったこと、生徒や職員の家庭の事情、職員同士のたわいもない雑談の中身まで、新入りの耳に届く範囲の話題には、呼ばれもしないのに全て首を突っ込んで、求められてもいない、しかもどこかズレたアドバイスをしてきた。
他の職員がどんなに眉を顰めても、
「 ちょっと遠慮して・・・。」
とはっきり口にされるまでは、決して引き下がらなかった。
いつしか新入りは煙たがられ白い目で見られるようになったが、まるでそんなもの意に介さないように、相変わらずどの話にも首を突っ込み、わかっているのかどうかわからない相槌を打っていた。
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