日々の恐怖 11月10日 溜息
高野山でのことです。
母の従弟が建築士で、あるお寺の修繕をしていたとき、そこの老僧が静かに、
「 貴方の御親戚に殺された方がいらっしゃいますか?」
と尋ねられた。
彼の姉が実は自殺をしていたので、
「 殺されてはいないが、自死している姉がおります。」
と言ったら、老僧が溜息を吐いて、
「 貴方の背後にいる女性が殺されたと訴えていますよ。」
と教えてくれて真っ青になった。
下山してから親戚一同集まって、こう言われた、ああでないこうでないの議論が始まり、そういえば亡くなる前なのにきちんとご飯の支度してたわ、綺麗にお化粧してたわと、小さな子ども二人いて、責任感の強いあの子が自殺だなんて、と色々噴出して疑念が残ったままとなった。
数年後、再婚した姉の元亭主が後妻を殺し、四国のある鉄橋から投身自殺というニュースがあって、親戚一同愕然。
やはり高野山の僧侶の話は本当だったのかということになりました。
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