日々の恐怖 8月16日 海の家 (7)
姉は小さい頃は言わなかったが、人魂を目の前30cmで見たと、俺が大学生になってから白状した。
小屋の外にある便所に行ったとき、やたらと外が明るいなと思っていたら、目の前にバスケットボールぐらいある人魂が飛んできた。
そして、姉の目の前で静止したので、よくよく人魂を見ると、人魂の光の中にお婆さんの生首みたいなものが見えた。
姉は驚いて、人魂の中のお婆さんに、
“ ペコリ!”
と頭を下げたら、凄い勢いで人魂は沖に向かって行った。
人魂の中に人の頭があるなんて知ったら小さい弟が怖がるだろう、と黙っていたそうだ。
俺が、
「 怖くなかったのか?」
と聞くと、
「 見慣れていたし、お婆さんも普通のお婆さんだったから、怖くはないけど、ただただ驚いた。」
と返答した。
俺は大学3年の時、バイクで一度だけ、あの海の家のあった辺りに行ったことがある。
駐車場と浜へ降りる階段が残っていたが、海の家は跡形もなく消えていた。
海藻人間を目撃した磯は残っていたが、俺が子供の頃のようには貝もなかった。
“ なんであの頃、あんなにも色んなモノを見たのに、あまり怖くなかったんだろうか?”
今、記録し、こちらに思い出として残しておきます。
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