日々の恐怖 10月10日 一軒家(8)
私とCと兄で、まず、第一の目撃現場である納屋へ行く。
兄は、納屋の隅の木箱を指差して一言。
「 あれだよ、あれ。
あれがムジナの棲家になってるんだ。
今、ひょっこり顔出してこっち見てる。」
「 ムジナって何?」
「 動物霊の進化系みたいなもんだ。
元々の正体は穴熊だな、こいつは。」
その後、兄はフンフンと箱の中のムジナさんと会話した後、(私達には見えないけど)
「 ムジナの言い分はな、婆さんにこの箱を貰った。
だから、ここで暮らしてたのに、おまえらが邪魔する、だってさ。」
その時、その箱はCのバイクの整備用品が入っていたが、兄はその用品をどかすと、
「 じゃ、この箱くれてやるから、この家で騒ぐんじゃねぇぞ。
また騒いだら、滅しちゃうからな。」
そして、兄は私達に、
「 一人一枚ずつタオルか毛布を持って来い。」
と言った。
私達が持ってくると、箱の中に放って、
「 これで約束成立だ。
あと、Cちゃんも、ここに道具とか入れるな。
この箱はムジナのものだから。
これも約束だ。」
「 本当に?」
と訝るCちゃん。
まあ、当たり前だよね。
便利に使ってた箱を没収されてるんだから。
「 じゃ、約束成立の証しに、ちょっとおまえ、走り回ってみろ。」
と兄が言うと、頭上の梁に
” トコトコトコ~!”
と音がする。
私が見上げても何も見えなかったが、Cは、
「 ウワァ~~~!」
と叫んだ。
Cが、
「 あ・・・・、あれ、あれっ・・・!
でも、前と違う、お多福になってるよ!」
「 前は脅かそうとして怖い面にしたけど、今回は友好関係にあるから、形を変えたんだな。」
と、兄が説明した。
童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ