日々の恐怖 1月6日 輸入雑貨(2)
結果的に上手く騙されたような気がしないでもなかったが、
彼女はああいう妙な小技を瞬時に繰り出せるほど器用なタイプではない。
あの時の嫌な感じはただの気のせいだと自分に言い聞かせ、
「 今後、記念日は月一回だけな。
それ以上は認めん!」
と彼女を小突いた。
夕食を摂ろうと入ったレストランで、注文の品が来るまでの暇つぶしに、
彼女はさっきのネックレスを取り出し、さっそく首に掛けた。
「 どう?似合う?」
と笑ってみせる彼女は実に嬉しげだったのだが、胸元にかかったそのネックレスをまじまじと見直してから、
「 あれ・・・・?」
と首をかしげた。
「 なんか思ったより地味。
こんなだったっけ?」
そのネックレスはバッファローの角を楕円に削った黒と白の大きなビーズの間に、
緑と黄色の小さなガラスビーズが交互に挟まれているだけのシンプルなデザインだった。
確かに、これ以外で彼女が手に取っていたのはもっと派手なものばかりだったので、
俺も彼女がこれを選んだ時は意外に思ったのだ。
「 じゃあ、返品して他のに変えてもらわない?」
怖がらせたくはなかったので理由は明かさず遠回しにそう聞いてみたのだが、彼女の答えは、
「 う~ん、まぁシンプルな方が使い回しもきくし、これでいいよ。」
だった。
まあ、変な感じがしたのはあの時だけだったし、たいして気にするほどの事でもないかもしれない。
ちょうど頼んでいた料理が運ばれてきたのもあって、俺達はそこで話を打ち切った。
その夜、彼女の部屋で眠っていると、夜中に彼女が突然ガバッと飛び起きた。
その気配につられて俺も目が覚めた。
「 何、どうしたの?」
眠い目をこすりながら彼女に尋ねると、彼女はしばらく俺の顔を見つめてから、
「 ・・・・なんだっけ?」
と訳の分からない質問で返してきた。
聞けば、怖い夢を見て飛び起きたのだが、内容をすっかり忘れてしまったのだという。
ああそう、と速攻で寝直す体勢に入った俺は、彼女にぶーぶー文句を言われながらも眠りに落ちていった。
それからほぼ毎日、彼女は悪夢にうなされるようになった。
目が覚めるといつも内容を忘れているのだが、泣きながら目覚めることもあった。
あのネックレスが怪しいと思った俺は、あの日感じた不安をついに彼女に打ち明けた。
「 だからさ、やっぱ捨てたほうがいいって。
あれ買ってからじゃん、うなされるようになったの。」
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