日々の恐怖 6月11日 喫茶店(3)
店主は途端に渋い顔になる。
店内を見渡し、私の他にはまだ誰も客がいないことを確認した。
「 絶対に他言しないと約束してください。
客足に響くと困りますから・・・。」
私が頷くのを見届けてから、彼は話しはじめた。
「 いや、大した話ではないんですけどね。
親父が定食屋を改装してこの喫茶店をはじめてから、なぜだかあんなことになったんです。
あの予約席のプレート、いくら片付けても、朝になったら勝手にあそこに置かれてるんですよ。
もちろん、誰も触ったりしてませんよ。
プレートを捨てても、いつの間にかあそこに戻ってきてるんです。
それにあの席、妙にひんやりとして寒気がすると思ったら、別の時は、今しがたまで誰かが座ってたような温もりが残っていることもあってね。
正直、気味が悪いんです。
一度椅子ごと撤去したこともあったんですがね。
次の日私が来たら、店の窓ガラスが全部割れていて、それも内側から。
その後も雨漏りやら空調の不調が続いて、結局椅子を戻したんです。
そしたら、店内の不具合もピタリと止まって。
その後はもう、あそこの席は初めからないものとして、無視することに決めました。
放っておけば、特に害はないのでね。」
童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ