日々の恐怖 1月19日 何かあってもうちは知らないから(2)
作業場所に提供された倉庫というのは古い、木造モルタル建ての建物で、元々は倉庫として建てられたものではなく、普通の住まいとして建てられたらしい家だった。
実際、建物のあちこちには生活臭のあるテーブルや箪笥や本棚や子供の玩具や、オークションに出せばレトロ品として売れそうな古いテレビやラジオが乱雑に置かれており、箪笥の引き出しには、埃まみれになって変色した衣類がきちんと畳んで詰まったままになっていたという。
そういった物を隅に押しやって、商店のイベントの看板や景品の残りや、もう使わない様なものがまた乱雑に積み上げられているだけの、倉庫とは名ばかりのガラクタ置場の様なところだった。
M君は、
「 酷いでしょ、そんなとこで作業させるのって。
もちろん本番稼動でパソコンやプリンター置くのはお店の事務所なんですけど、その事務所が狭くて僕たちが座る場所が無くって、準備作業はボロ倉庫でやる事になったんです。
作業してたのがまた真夏の暑い時期で、クーラーはとりあえずありましたけど、これまた年代物の古~い、昼間はほとんど冷えない様なボロでした。
狭い部屋に野郎ばっかりひしめいて、汗ダラダラかきながらプログラム作ってたんですよ。
それで痩せましたもん、僕・・・・。」
とブツブツ言っていた。
「 それで、そこで毎日同じ時間の頃に見られたのがね・・・・。」
M君たちが作業していた部屋には、高さ1メートル80センチ、幅1メートル程のスチール製の本棚があり、棚にはプログラム仕様書の分厚いファイルや環境設定マニュアル本などがぎっしりと並べられていた。
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