大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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霧の狐道103

2008-08-23 19:07:38 | E,霧の狐道
 道の左側の土手には壁のように連なる高いセイタカアワダチ草が続いている。
俺は、黄色いセイタカアワダチ草の壁に沿って自転車を倒しながら、左にカーブを進む。
しばらく進むと、突然、セイタカアワダチ草の壁が途切れ、急に橋が現れた。
壁の陰から、急に橋の欄干が飛び出して来たように、大きく見えたのだ。

“ ん・・・・?”

 俺は、少し怪訝に思った。
橋の欄干の手前に、五歳ぐらいの女の子が横を向いて立っているのが見える。

“ 親が、下の川で魚釣りでもしているんだろうか・・。
 退屈して、一人で橋の上まで上がって来たのか・・。”

 でも、それにしてもおかしい。
今時、赤い着物に帯を締めている。
それに、両手で鞠を胸元に大事そうに持っている。
 女の子は、橋の欄干の手前から川の方を向いて、少し俯き加減で立っている。
横顔は、おかっぱの髪に隠れて見えない。

“ ・・・・・・・・・。”

 俺は、スピードを少し緩め、様子を窺いながら自転車を進めた。
俺は、女の子にドンドン近付く。
と、そのとき、橋の下から、男の声が聞こえた。

「 お~い!」

俺は、声を聞いて思った。

“ 何だ、やっぱり父親が釣りをしているんだ。”



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