新イタリアの誘惑

ヨーロッパ・イタリアを中心とした芸術、風景。時々日本。

階段紀行・イタリア ヴェネツィア編⑥ アカデミア橋。頂点までの段数が手前側と向こう側で3段も違う不思議な橋

2021-04-03 | 階段紀行・イタリア

 次もカナルグランデ(大運河)に架かる橋・アカデミア橋。ルネサンス期ヴェネツィア絵画の殿堂であるアカデミア美術館の真ん前にあるのがこの橋だ。

1854年の建造で、1932年の架け替えの時、暫定的に木造で橋が造られたが、そのまま半世紀が経過、結局下部だけを鉄で補強した木橋のままで現在に至っている。

 美術館側からだと橋の頂点までは53段。一方ステファノ広場側からは50段しかない。つまり手前の島と向こう側の島の岸の高さが違うためにこうした現象が生まれている。橋が島と島とをつなぐ手段だったという、ヴェネツィアならではの特殊事情がなせる現象だ。

 バポレット(定期船)に乗っていると、橋通過の際、橋の下からサルーテ教会が正面に見えて来る。

 4年前の旅行の時は、この橋の近くに宿を取ったことでサルーテ教会越しの朝日を見ようと早起きして橋に出かけたことがあった。あいにくすっきりと晴れてはくれなかったが、透き通るような早朝の静寂を肌に感じることが出来た。

 次はスカルツィ橋。鉄道でヴェネツィア駅に到着すると最初に目にするのが、大運河に架かるこの橋だ。高々としたアーチ橋が「運河と橋の街・ヴェネツィア」を強烈に印象付けてくれる。

 最初の建造は1858年。現在の橋は1932年に完成したものだ。ここはどちらから昇っても階段は40段ずつ。アカデミア橋に比べて段数が少ないのは、一段の間隔がこちらの方が大きくなっているためだ。

 毎年9月の第1日曜日に行われるイベント「レガータストリカ」では、アドリア海の女王と謳われたヴェネツィア共和国時代の華やかな水上パレードが行われるが、そのスタートがこの橋付近だ。豪華で優雅なパレードを堪能することが出来る。

 

 

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階段紀行・イタリア ヴェネツィア編⑤ 大運河に架かる最古の橋「リアルト橋」と最新の橋「カラトラヴァ橋」

2021-03-30 | 階段紀行・イタリア

 ヴェネツィアは100以上の小さな島で構成される。その島々をつなぐのが無数の橋だが、ここはごく一部の島を除いて車の通行は認められておらず、島々に物資を運ぶのは船に限られる。

 そうなると、橋は船が通り抜けるために中央部分を高くした太鼓橋スタイルにならざるを得ない。ほとんどの橋は半円の高低差のついた形に作られることになる。

 こうして、他の都市では車の交通上の便も含めて真っすぐな橋が架けられているのに対して、ヴェネツィアだけは高低差のある階段状の橋だらけという特殊な街になっている。

 歴史上の解説からすれば、車などの無い時代からこうした細い道、無数の橋という町で発展してきたことから、車が導入出来にくい環境だったということが言える。とにかく、今回はそんなヴェネツィアの橋階段に注目しよう。

 まずはおなじみのリアルト橋。ヴェネツィアの橋の中で最も古く、島の中心地に架けられた橋だ。1180年の最初の橋は船を並べて両岸を行き来する浮橋だった。その後木製の橋になり、1444年には群衆の重みで崩れ落ちたことも。

 15世紀の橋は木製の跳ね橋だった。当時の橋をカルパッチョが描いている。リアルト」の語源はリヴァス・アルトウス(島々を分かつ深い水路)だという。

 現在の形になったのは1591年。大理石による堂々たる橋は、ヴェネツィアの商業の中心地としての貫禄十分の風格を保っている。その設計を担ったのがアントニオ・ダ・ポンテ。ポンテというのはイタリア語で橋のこと。まさに橋を架けるために名付けられたような建築家だった。

 この橋は、頂上の部分が平らになっていて、綺麗な太鼓橋の外観ではない。だが、中心部が高く盛り上がっているため階段が付けられる。それも結構長い階段だ。

  頂上部は、ゴンドラの行き交うカナルグランデ(大運河)の風景を眺めるのに絶好のロケーションになる。「ヴェネツィアにいる!」と実感する瞬間だ。

 対して、カナルグランデに一番新しく架けられたのがこの橋。2008年に150年ぶりに完成した大運河4番目の橋で、正式名称はポンテ・コスティトゥツィオナーレ(憲法の橋)だが、設計者サンティアゴ・カラトラヴァから「カラトラヴァ橋」と呼ばれている。

 300ものガラス階段と90枚のガラス欄干を使った新しい形式の橋で、バスの終着点であるローマ広場とサンタルチア鉄道駅との通行がとても便利になった。

 ただ、ヴェネツィアの風景にはそぐわない感じで、滑りやすいという声もあって、未だにそれほど良い評判は聞かない。

 

 

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階段紀行・イタリア ヴェネツィア編④ かたつむり(ボーヴォロ)の階段を昇ると、ヴェネツィアの庶民の家々が眼下に広がった。

2021-03-27 | 階段紀行・イタリア

 哲学者の一族、コンタリーニ家の宮殿の一部として15世紀に造られた外階段。ルネサンス様式とゴシック様式とが混じりあった形だ。

連続したアーチがらせん状に連なっており、「カタツムリ」を意味するボーヴォロの名が付けられた。

 こんな入口から上に昇って行く。

 窓からは周囲の景色が眺められる。ちょうどサルーテ教会のクーポラが正面に見えた。

 こちらはサンマルコ広場の鐘楼。

 ロケーション的に周りに大きなな教会などがないため、近場の庶民的な家々の様子も眺められる。

ただ、何度も付近を通りかかったが、いつも「見学不可」状態が続いていて、中に入ったのは1回きり。古い都市を見尽くそうとしても、そう簡単には門戸を開いてはくれない、ということだろう。

 トルチェッロ島は、ヴェネツィア発祥の地の1つ。7~10世紀には最も重要な街として2万人もの人がここに暮らしていたという。マラリアの流行で人々は他の島へ移住してしまい、今ではごく少数の人しか住んでいない。

そんな街に唯一手摺りの無い橋が存在する。

 通行禁止となっていたが、石を積み上げて造られた階段はちゃんと存在していた。

 ちなみにこの橋の名前は「悪魔の橋」。

カンナレージョ地区の外れをぶらぶら歩いていたら、こんな橋階段を見つけた。

 渡ってみると、ここはヴェネツィア本島の北辺で、イタリア半島が目の前に望める位置。

 鉄道橋の全体や海の模様が眺められるロケーションだった。

もう1か所。カルロ・ゴルドーニの家の階段。

 ゴルドーニはヴェネツィアの代表的作家だ。民衆の姿を描いた劇で大きな支持を集めた。その生家が博物館になっていて、たまたま通りがかったので入館してみた。このころはほとんど階段に注目していなかったので、こんな写真しか撮っていないが、いわゆる邸宅の中庭風なスペースについていた階段だ。

 

 

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階段紀行・イタリア ヴェネツィア編③ 最高級ホテルの華麗な階段、ショッピングモールの赤い階段、宮殿の螺旋階段

2021-03-22 | 階段紀行・イタリア

  

これは一体何だ!

どこかの王家の結婚式場?

いえいえ、ここはヴェネツィア随一の五つ星ホテル「ダニエリ」のロビー。

 元々は14世紀に建てられた大富豪ダンドロ家の宮殿だ。ダンドロ家は何度もヴェネツィア共和国のドージェ(総督)を輩出している名門で、格式の高い家柄。その建物が1822年からホテルとして生まれ変わった。

 それだけに内部の装飾は華やかで、中に入るとちょうど正面に吹き抜けのロビーがあり、最奥のきらびやかな階段が目に飛び込んでくる。もちろん赤いじゅうたんが敷かれ、非日常の空間に招き入れられる舞台装置が整っている。

 2011年公開の映画「ツーリスト」でもこのホテルが重要な場面に使われ、主演のジョニー・デップ、アンジェリーナ・ジョリーが館内でアクションを展開した。

 (ただ、私には手の出ない高級ホテルなので、ロビーで一杯1000円のコーヒーを飲んだ経験しかありません)

 次にい紹介するのは、旧ドイツ人商館。ルネサンス期ドイツ人商人たちがヴェネツィアとの交易基地として使われた館。

リアルト橋のたもとという好立地にあり、近年まで郵便局として活用されていたが、2016年リニューアルされてショッピングモールに生まれ変わった。

 ファッションや食品など高級なものを中心に品ぞろえされていて、階段もこの通り赤い色調で高級感たっぷり。

 屋上には展望スペースが設けられており、カナルグランデがはるかに見渡せる。記念写真にもってこいの場所だ。

 もう1つ。これはかつての宮殿「チーニ館」内にある螺旋階段。裕福な実業家ヴィットリオ・チーニが買い取って住まいとした建物で、今は彼の収集した宗教美術を中心とした美術館になっている。

 8の字を描いたような大理石の螺旋階段が特徴。ヴェネツィアでは意外に螺旋階段を見かけることが少なく、貴重な1枚だ。

 ただ、改修など色々な理由で休館が多く、私はヴェネツィアヴィエンナーレの会場となった時に1回入ることが出来ただけ。

 

 

 

 

 

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階段紀行・イタリア ヴェネツィア編② カドーロ(黄金宮殿)で見つけた、力強い直線と柔らかなアーチの階段。

2021-03-19 | 階段紀行・イタリア

 ヴェネツィアゴシックを代表する建物が、大運河の中ほどに建っている。「カドーロ」。日本語に訳すると「黄金宮殿」となる名称は、かつてこのファザードが黄金で装飾されていたためだという。

 その中庭に颯爽と配置されているのがこの階段だ。

 上から見ると、階段の直線部分とその下部のアーチ部分との対照的な線が絶妙に調和した姿を見せている。

 硬い石のフォルムで形成される階段が、高い建物の基礎部分にしっかりと落ち着きを見せている感じを、近くのベンチに座って見とれていた。

 その中庭中央にあるのは、15世紀の井戸。側面に多数の人間の浮き彫りがなされた、丁寧なバルトロメオ・ボンの作品だ。ヴェネツィアでは貴重だった水の確保に強い思いを持っていたことの表れなのだろう。

 2階に上がるとルネサンス様式の窓から光が漏れる。この窓も芸術作品のようだ。

 窓越しに見る対岸。市民の台所・魚市場が目の前だ。見渡せば、中世の貴族にでもなったような優雅な気分に浸ることが出来る。

 今はフランケッティ美術館になっていて、15~18世紀の美術品が展示されている。「絵画の王」と称されたティツィアーノの作品も、ここで見ることが出来る。

 

 

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