大聖堂内部で一際目を引くのは、ゴシック特有の高い身廊によって広大なスペースを与えられた壁を利用したステンドグラスだ。 中でも入ってすぐの右側に並ぶ「バイエルン窓」と呼ばれる5枚の巨大なステンドグラスは秀逸。
バイエルン王ルードヴィヒ1世から寄贈されたもので、1846年から3年間にわたってミュンヘンで造られた作品。火災によって失われた大聖堂の再建が始まってから600年を記念して取り付けられた。
向かって1番右のステンドグラスのシーンは、荒れ野で説教する洗礼者ヨハネ。キリストに洗礼を施した聖人だ。
その下にはカール大帝ら歴代の皇帝らの顔が並ぶ。
それぞれのステンドグラスの下には、バイエルン候から寄贈されたものであることを示す紋章と文字が載っている。
2番目のステンドは、この教会の建設理由ともなった東方3博士の礼拝。聖母子を中心に鮮やかな色彩でその光景が描写されている。
下部には予言者イザヤ、エレシャ、エゼキエル、ダニエルの姿。
3番目は十字架から降ろされるキリストの姿=ピエタ。キリストを抱く母マリアを始めとして多くの人達が悲しみと共にその光景を見守っている。
その下には4人の福音書記者。左からマタイ、マルコ、ルカ、ヨハネと、福音書を記した順に並んでいる。
一番上の部分には最後の晩餐と思われる情景があるのがわかる。
4番目は聖霊降臨。すべての人に救いの手を差し伸べようと神が降りて来る場面だ。
下部にはアウグスティヌスら4人の聖人像。
最後、5番目は聖ステファノの殉教。聖ステファノはキリスト教を信仰したという理由で殺害された最初の殉教者。石打ちの刑にされたその場面が描かれた。
下部には司教や教皇たちの姿。この1番下にもバイエルンの紋章と文字があるのがわかる。
バイエルン窓以外にもこんなステンドグラスを見つけた。「聖パウロの回心」。パウロは元々反キリスト教の立場で、先ほどの聖ステファノの石打ちの刑にも加担していたといわれるが、ある日天の声を聴いて改心し、キリスト教の伝道師になった人だ。
この絵はその天の声の瞬間だ。キリストが天から登場し、驚いて落馬したパウロがキリストを見上げている。
となると、隣りにある絵は聖ペテロに違いない。
カトリックの総本山であるバチカンのサンピエトロ大聖堂は、このペテロを祀った教会だ。