新イタリアの誘惑

ヨーロッパ・イタリアを中心とした芸術、風景。時々日本。

パリ・モンマルトル紀行⑨ アール・ヌーヴォーの地下鉄駅とパリの夕景

2017-01-31 | パリ・モンマルトル

 アントレ・アントワーヌ通りの階段脇の家にはかつてスーラやモディリアニが住んでいた。

 階段の一番下には、1887年築の自由劇場があり、芸術家たちが頻繁に出入りしていた場所だった。

 地下鉄アベル駅に着いた。アール・ヌーヴォーのオリジナルの出入り口が残っているのはパリでもこの駅ともう1つくらいとか。

 天井付近にも細かな細工が施されている。

 反対側から見ると、こんな具合だ。

 ピガールのイタリアンの店でピザをほおばり(意外にすごくおいしいピザだった)、ホテルに戻った。

 ホテルは古くて従業員の対応もぶっきらぼう。お世辞にも清潔とは言えない部屋だったが、モンマルトルを散策しようという目的にはぴったりのロケーション。地下鉄駅に近くムーラン・ルージュそば。しかもリーズナブルで、ホテルの質は二の次という選択だった。


 部屋は6階。窓を開けて外を眺めると、通りがオレンジ色に変わっていた。

 パリは、ビルの高さが規制されているのでスカイラインがきれいにそろって美しい街並みを形成している。

 車の流れを眺めながら、買ってきた安ワインで一杯。

 通りの奥の突き当りがクリシー大通りだ。

 すっかり夜の領域に入ろうとしている。今日は相当歩いた。さあ、ひと風呂浴びて疲れを取ろう。
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パリ・モンマルトル紀行⑧ 世界中の愛の言葉が・・「ジュテームの壁」

2017-01-28 | パリ・モンマルトル

 坂道を下って、地下鉄アベス駅方面に向かった。途中、少し広めの広場に「ジュテームの壁」があった。


 世界各国の様々な言語で愛の言葉が綴られている。

 もちろん日本語も。「愛しています」

 「君が好だ」  あれ、送り仮名が変。日本人じゃない人が書いたんじゃないかな。

 「大好き」 これはOK。

 シャンソン歌手のような女性のイラストも描いてあった。

 ここの公園には可愛い花が咲いていた。

 サン・ジャン・ド・モンマルトル教会が見えてきた。1920年の完成。ここは世界で初めて鉄筋コンクリートで造られた教会として有名だ。

 通常は石の柱が立ち並ぶ内部だが、ここは鉄製の柱が使われている。ただ、そこに花模様が付けられて無骨さを緩和する工夫がなされていた。


 ここの特徴は、壮麗なステンドグラス。青を背景としたキリスト磔刑図も、悲惨さよりも美しさが先に建ってしまう印象。
 
 旅をするキリスト。

 このようにとてもカラフルで軽快なたたずまいだ。

 子供を抱えたヨセフ像。

 この天使像もさわやかな印象。

 帰りがけに改めて入り口を観察すると、非常に細かな装飾タイルが使われていることがわかる。鉄筋の無骨さをカバーする工夫だろう。アール・ヌーヴォーの陶芸家ビゴの作だという。
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パリ・モンマルトル紀行⑦ 現存するパリ最古の教会「サンピエール・ド・モンマルトル教会」

2017-01-24 | パリ・モンマルトル

 ソール通りに入った。もうテルトル広場の手前まで戻ってきた。サクレクール聖堂も、街並みから頭一つ抜けて大きくそびえ立つ。

 名画のポスターを売る店が、店頭にずらりと絵を並べ始めた。

 その奥、「ル・コンシュラ」はロートレックやモネらがよく集まって芸術論議を展開したカフェだった。今はムール貝のおいしい店になっていた。

 隣りの面白い看板の店「オーベルジュ・ド・ラ・ボンヌ・フランケット」は、中庭をゴッホが描いたことで後世に名前が残る店になった。

 テルトル広場周辺は次第ににぎわい始めた。

 しゃれた格好の観光客も。カフェの店先で語らうカップルは、モンマルトルの風景にピッタリ溶け込んでいた。

 周辺は坂道だらけだけど、続々と観光客が階段を上ってくる。

 上から見ると、高低差はかなりのもの。

 またぶらぶらと歩きながらサンピエール・ド・モンマルトル教会に入った。

 この教会はルイ7世が入手した土地に1147年、教会が設立された。現存するパリ最古の教会といわれる。聖イグナチオがイエズス会の設立を宣言した教会としても知られている。

 「モンマルトルの聖母」と呼ばれる像。両手で胸を覆い軽くうつむく姿は、清楚で慈悲深いマリア像の典型として、慕われているそうだ。

 ステンドグラスだけは新しそう。

 写真を撮り忘れたけれども、ここには聖ドニの像もあった。3世紀、首を斬られてもその首を持って10数キロ離れたサンドニまで歩いたといわれる伝説の殉教者だ。その彼が斬られた現場はまさにここ、モンマルトルだった。
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パリ・モンマルトル紀行⑥ 「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」に通い詰めたルノワール

2017-01-21 | パリ・モンマルトル

 「洗濯船」跡から坂道を下って、風車のある建物を目指した。

 ムーラン・ド・ラ・ギャレットだ。


 19世紀後半、セーヌ県のオスマン知事がナポレオン3世の下でパリ大改造を推進し、パリは近代都市へと変貌した。また万博のために造られたモニュメントがパリを彩って行く。

 そんな時代の中で、労働者階級にも暮らしにゆとりが出始めてくるようになった。

 ギャレットは1890年にオープンしたダンスホールの付いた酒場。庶民たちも日曜日には、ここに集まってダンスを楽しむという憩いの場所になって行った。
 
 その模様を鮮やかに掬い取ったのが、ルノワールの描いた「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏場」だった。
 ルノワールは近くにアトリエを借り、毎日ここに出かけると、外光の降り注ぐ情景を丹念にスケッチした。そして、この作品を完成させた。

 今でも健在の風車が、当時の開放的な賑わいを思い起こさせてくれる。

 そこから北へ歩いてゆく。とても気持ちの良い晴天だ。

 ダリダ広場に出た。この近くに住んでいたシャンソン歌手・ダリダは1987年に亡くなったが、死後10年の1997年にこの地にブロンズの胸像が置かれた。モンマルトル墓地に等身大の像が建っている。
 イタリア・ベローナのジュリエット像のように胸がピカピカに光っていた。やはり「幸せ伝説」でもあるのだろうか。

 この地から見上げると、サクレクールの塔がはるかに見える。

 はつらつと写真を撮る女性と出会った。
 「どこから?」と聞くと、「コロンビアから」。やはり、モンマルトルにあこがれて訪ねてきたのだという。

 少し坂道を上ると、コルトー街12番地にモンマルトル博物館がある。

 1875年から数年間、ルノワールがここに住み、制作に励んだ。「ギャレット」に通ったのもまさにここから。その後、ユトリロ一家が住んだ家でもある。

 今はモンマルトルの文化史を紹介する博物館になっている。

 この周辺の風景はとても美しい。


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パリ・モンマルトル紀行⑤ 「洗濯船」で始まったピカソの恋

2017-01-17 | パリ・モンマルトル

 サクレクール聖堂のすぐ西側にテルトル広場がある。ここには1860年にモンマルトル村がパリ市に編入されるまでは、村役場があった所だ。辺地のために安い家賃のアパートがあり、そのためにイタリア、スペインなどからやってきた貧乏画家たちが移り住み、野望を抱いた若者たちの聖地となっていた。

 今では観光客目当ての似顔絵描きたちの店となっている。絵描きさんたちもようやく開店準備を始めたところだ。

 賑わいはこれから、ということで、近くの店に飛び込んでカフェオレとクロワッサンで腹ごしらえをした。

 しばらくして店を出てみると、ちょうど団体のグループが到着したよう。

 一気に広場も賑わいを見せ始めた。

 急な階段の下り坂を降りた。

 下の道にある風情たっぷりの店はまだ閉店中。


 その近く、ガブリエリ通りにピカソのアトリエがあった。

 1900年にパリに着いて友人と共有したアパートだ。

 ピカソは1904年からエミール・グドー広場にあるバトー・ラヴォワール(洗濯船)と呼ばれるアパートに移った。

 
 ある日、突然降りだした大雨を避けようと、一人の若い女が急な階段を駆け上がり、小広場にあるボロアパートに飛び込んだ。すると、そこには燃える瞳を持った小柄なスペイン男が立っていた。
 
 23歳のピカソが、同い年の恋人フェルナンド・オリヴィエと出会った運命の日だった。

 以来二人は「洗濯船」で青春の日々を過ごし、若い画家たちと夢を語り合った。
 ピカソは生涯何度も大恋愛をするが、その最初の恋でもあった。


 このアトリエはやがてモディリアニ、アポリネール、ジャン・コクトー、マティスなどの芸術家が出入りする伝説的な場所となった。


 「洗濯船」の名称は、「歩くとギシギシ音がする床が、まるでセーヌ川に浮かぶ洗濯用の船とそっくりだ」と詩人マックス・ジャコブが名付けたものだ。

 前の広場には、こんな4人の女性が支え持つ噴水があった。
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