ウフィツィ美術館3回目は聖母以外の作品を個人的趣味で選んでみた。
まずはレオナルド・ダ・ヴィンチが最初に頭角を現した作品「キリスト洗礼」。実はこの作品は彼の師匠であるヴェロッキオのもの。
ただ、ヴェロッキオが自分の作品の端に弟子入りしたレオナルドに天使を描かせたところ、この弟子は見事に素晴らしい天使を描いてしまった。これを見た師匠はびっくり。それ以降絵を描くのを断念したと伝えられる。
そのレオナルドが後年描いた「東方三博士の礼拝」。未完成ながら、聖母を取り囲む人々の渦が画面いっぱいに広がっている。ちょうど6年にわたる修復を終えて限定公開中の絵に出会えた。
アントニオ・ボッライウオーロ「貴婦人の肖像」。1400年代のフィレンツェの貴婦人特有の髪型と耳を覆う薄いヴェール、輝く金髪など繊細な描写が光る絵だ。
ラファエロの「自画像」。甘いマスク。とても女性にはもてたそうで、そのために短命に終わったともいわれている。‟美男薄命”?
ティツィアーノ「フローラ」。ヴェネツィアで絵画の王といわれた巨匠の初期の代表作。花と豊饒の女神フローラを瑞々しいタッチで描いている。実は自分の婚約者の肖像とも。
そのティツィアーノがセンセーションを巻き起こしたのがこの「ウルビーノのヴィーナス」。しわの寄ったシーツに全裸で横たわるヴィーナスは、右手に愛のシンボルであるバラの花束。そして挑発的なまなざしで前を見つめる。まさに官能あふれるこの絵は娼婦がモデルだったという。
ただ、その繊細な描写は他の追随を許さず、高いレベルの気品さえ漂わせる名作だ。
次にちょっと時代を飛ばしてカラヴァッジョの「若きバッカス」。酒の神バッカスは若々しい表情だが、腫れぼったいほほや腐りかけの果物など容赦ないリアリズムによる表現は彼らしい。
ブロンズイーノ「エレオノーラ・ディ・トレドと息子ジョヴァンニの肖像」。メディチ家のコジモ1世の妻と息子を描いた。スペイン風の衣装の豪華さと対照的な母子の静かさが印象的。
つぎに彫刻も見て行こう。
ここはトリブーナと呼ばれる部屋。もともとは事務所だったこの建物だが、そのころからトスカーナ公フランチェスコ1世の個人的な美術収集品はこの部屋に集められていた。つまり、ウフツィ美術館の原点ともいうべき部屋だ。その中心にあるのが「メディチ家のヴィーナス」。
この横たわる女性像は「眠れるアリアドネ」。古代彫刻だが、体をねじらせて立体感を強調させたこの像は、実はミケランジェロの作品「聖家族(トンド・ドーニ)」の前に置かれており、その影響を比較、感じることが出来る。
「眠るエルマフロデイト」これも紀元前2世紀ころの彫刻だ。
このほかにもこんな美しい頭部だけの像もあった。
とにかくまともに見れば1週間もかかりそうな膨大な作品群なので、ほんの一部だけのピックアップだったが、それでも満腹状態で館を後にした。次はパラティーナ美術館かな。