ベルリンの象徴ブランデンブルク門から北へ約15分のところに森鴎外記念館がある。鴎外がベルリンに留学していた時に滞在した建物が、記念館として整備されたものだ。
通りから見えるベージュ色の建物の壁面に「鴎外」の日本語が大きく書かれているのがわかる。
ただ、建物正面は店になっていて、記念館は横の通りにある入口から2階に上った所にあった。
その上り階段がこれ。一見珍しい階段というわけではないが、
左の壁を見ると、文字が書かれている。「げに東に還る今の我は、西に航せし昔の我ならず・・・」。そう、この文章は鴎外のデビュー作「舞姫」の文章だ。
若き留学生が現地の少女を見初めながら、留学を終えた主人公は日本に帰り、その恋は実ることなく終わってしまう。ストーリーは、鴎外の実体験を色濃く反映した内容になっている。
階段を上りながら、若き鴎外青年の心情を反芻する貴重な時間を過ごしたひと時だった。
室内には大きな鴎外の肖像画と共に、背の高い本棚に作品や関係資料が展示されている。
また、最愛の娘「マリチャン」へあてた直筆の手紙も残されていた。やはり作家となった少女時代の森茉莉へあてたものだ。
管理人の日本人女性に鴎外に関する資料もいろいろ見せてもらい、貴重な時間を過ごさせてもらった。
その夜のベルリンはプロジェクションマッピングが行われ、華やかに彩色されたブランデンブルク門の七変化を満喫した。