2018年12月 雨に見舞われたパリの夕暮れ
ノートルダム大聖堂を訪れた時 空を雲が覆って雨が降り出した
大聖堂へはこれまで何度も足を運んだが 雨に見舞われたのは初めて
周囲も暗くなって 建物がかすむようになり
ホテルに引き返そうとしたちょうどそのとき 照明が点灯した
ああこれなら大丈夫 正面にある聖アンナの門審判の門聖マリアの門
3つの門の像を 改めて観察することが可能になった
ところが今度は 急に雨足が激しくなった
叩きつける雨音を聴きながら ふと昔読んだ文章が浮かんだ
吹き募る雨風
外套の襟を立てて 横しぶきのこの雨に濡れながら
あなたを見上げているのは わたくしです
ノオトルダム ド パリの カテドラル
あなたを見上げたいばかりに 濡れて来ました
あなたに さはりたいばかりに
あなたの石に肌に 人知れず接吻したいばかりに
あなたは ただ黙って立つ
吹きあてる嵐の力を じっと受けて立つ
あなたは天然の力の強さを 知っている
しかも大地の揺るがぬ限り 雨風の跳梁に
身を任せる心の 落着きを持っている
彫刻家として修業を始めてパリを訪れた 若き日の高村光太郎の詩だ
星雲の志を抱き 冷たい雨に打たれながらも
高さ69mの鐘楼96mの尖塔を見上げる 光太郎の熱く高ぶる心
その100分の1いや1000分の1を 感じることが出来たのかもと
篠突く雨の中で 胸のざわめきを感じた時だった