新イタリアの誘惑

ヨーロッパ・イタリアを中心とした芸術、風景。時々日本。

ボローニャ⑥ モーツアルトが学び、ロッシーニも学生だった音楽院のあるザンボーニ通り

2018-08-28 | イタリア・ボローニャ

 朝の散歩を兼ねてザンボーニ通りを歩く。ホテルがこの通りに面しているので、寝ぼけ眼でも迷う心配がない。

 この通りは16~18世紀の重厚な館が続き、大学、教会、美術館などが立ち並ぶ。そのため若者も多く、活気が感じられる。

 すぐ近くの小広場にはオープンカフェがあり、若者たちでにぎわっていた。

 また、通りの片側にはボローニャ名物のポルティコ(アーケード)が続く。

 天井のアーチの連続は視覚的にも魅力が一杯だ。

 マルティーニ音楽院が見つかった。少し中を見せてもらっていいですか、と受付で尋ねると、心地よく中に入れてくれた。
 中庭に入るとすぐに、日本人女性がベンチに腰かけているのを見つけた。

 聞くと、この音楽院に留学中とのことだった。

 この音楽院は歴史的にも重要なところだ。1770年には少年のモーツアルトがボローニャを訪れ、この音楽院を受験、マルティーニから様々な音楽理論を学んだという。

 また、ベルガモで生家を訪れたドニゼッティもここで学び、教鞭も執った。

 そんなエピソードに加えて、ロッシーニもまたこの音楽院の学生だったと聞いていたので女性に聞くと、「私はよく知らないので・・・」と答えを濁されてしまった。
 単なる噂話なのかも。そう思いながら入口に戻ると、実は正面入り口の上方の壁にプレートが掲げられていた。

 そこには「ここでロッシーニが学んだ」としっかり記されていた。

 音楽院の隣りは、サン・ジャコモ・マッジョーレ教会。左右に35もの礼拝堂を持つ大規模な教会だ。

 大小様々な彫像が並ぶ。

 これはキリストのむち打ちの光景か?

 いずれも水準以上のレベルに見える。

 尼僧の像もあった。

 アントレ・ガレアッツォ・ベレティヴォーリオの墓。15世紀にボローニャの政権を担っていたベレティヴォーリオ家の礼拝堂だ。

 また、音楽院近くの路地のポルティコ天井にも古い年代のものと思われるフレスコ画が残されていた。

 帰り道、マンゾーリ館やマンテーニャ館といった邸宅の並ぶ街路の美しさに見とれながらホテルに戻った。

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「かまくら長谷の灯かり」で夜の鎌倉を満喫してきた!

2018-08-24 | 鎌倉散歩

 今開催中の「かまくら長谷の灯かり」を見てきました。この催しは長谷地区にある鎌倉大仏を始めとした8つの施設をライトアップするという夏の新企画で、今年で3回目。

 ライトアップ時間は午後6時30分からとなっていたが、今は日没がちょうどそのころ。大仏のある高徳院に着いた時はまだまだ空も明るく、ライトアップの効果を感じるまでには30分近く待つ必要があった。

 ようやく夕闇が濃くなり、大仏にあたるライトが明るさを増してきた。

 観光写真でよく見る大仏像は正面からなので、こんな横顔は現地に行かないと拝むことはできない。
 ちなみに大仏像の高さは11・3m、重さは121t。顔の長さだけでも2・35mあるという。

 午後7時過ぎ、他の場所も回らねばならないため、お別れに大仏像の正面から全体像を!

 次に長谷寺に向かった。観音堂は見事な青色にライトアップされていた。清涼感満点。

 中に入ると高さ9・18mの十一面観音が、正面奥に立ちはだかっている。金色に輝いているが実はクスノキの木造観音だ。しかも日本最古の木造観音だという。

 大仏とはまた違った意味で巨大さに圧倒された。

 この寺は広大な敷地を持っており、中にうっそうとした林まである。

 観音堂横のスペースは石畳が渦を巻くように敷かれており、それがライトを浴びて虹色に反射していた。

 次に向かったのが甘縄神明宮。710年創立ということで、鎌倉一古い神社。緑に包まれた階段に灯がともされて神秘的なムード。

 神社の建物は、かつて源頼朝も修理をさせたことがあるとのことで、由緒ある歴史を抱えている。

 そこから光則寺へ。花の寺と呼ばれ、季節ごとの花で彩られる寺。ただ今回は花より光。長く続く参道の両側に明かりが灯り、その最奥、山門がライトアップされていて、緩やかな上り坂を歩きながら一歩ずつ別世界に足を踏み入れて行くかのような気分にさせられた。

 ライトアップは午後8時30分までだが、最終入場が8時都のことで時間が亡くなり、急いで御霊神社に駆け込んだ。

 ここの社殿は周囲がかなり暗くなっていたので、闇から両手を広げた物の怪が襲い来るといった幻想的な姿に見える。

 ライトの色も変化する。

 境内全体も趣のある場所だ。

 この神社は正面の鳥居のすぐ前を江ノ電が通っているという珍しいロケーション。

 そこから線路沿いに歩いて長谷駅まで戻った。

 線路がカーブする先に見える夜のプラットホームもなかなか趣があった。

 時間がなくて8か所のライトアップすべてを見ることは出来なかったが、楽しい鎌倉の夜散歩だった。
この催しは26日の日曜日まで行われている。


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ボローニャ⑤ ホテル屋上からボローニャの街を俯瞰する。街角では変わったドアノブ探し

2018-08-20 | イタリア・ボローニャ

 ボローニャで宿泊したホテルは旧市街のザンボーニ通りに面したベストウエスタンホテル。実はネット検索でこのホテルの屋上からの眺めが抜群であるらしいことがわかったからだ。
 朝、屋上に昇ってみた。晴れ渡った空の下、見事に街の風景が眼下に広がる。

 日本の都市のような高層ビルは全くないため、教会などの歴史的建築がビューポイントとして目に飛び込んでくる。

 聖ペトロニオ教会がその中心だ。

 ボローニャの特徴でもある塔、中でも2本の斜塔はたっぷりの存在感だ。

 この屋上は結構広い。椅子もあるのでここでサンドイッチでもほおばりながら景色を眺めるのもいいかも。

 別の教会の塔も間近に見える。

 2本の斜塔を少しクローズアップ。

 高いほうの塔の先端には、アンテナか避雷針があるのがわかる。

 聖ペトロニオ聖堂の屋根のカーブが美しい。

 マクロの眺めを見た後は、街で見つけたミクロの面白スポット=ドアノブ色々をどうぞ!

 怒れる老人2人の恐ーい顔

 ライオンが立ち上がっている。しかもこっちを見つめてる。

 この2人の女性は間違いなく踊っている。

 丘の上にあるボスコ教会では、一見執事風な紳士と、

 召使と思える中年女性が出迎えてくれた。

 こんなドアノブは、この後訪れたヴェネツィアではあふれるほどの数を見つけたので、ドアノブフアンの方(そんな人がいるかどうかは不明ですが)どうぞご期待を!

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ボローニャ④ フレスコ画に囲まれた空間に数世紀前の楽器が並ぶ。コロンバノ楽器博物館

2018-08-17 | イタリア・ボローニャ

 コロンバノ楽器博物館に出かけた。

ここは16世紀ころから聖コロンバノ祈祷書所という教会の建物だった。

従って、壁にフレスコ画が描かれているなど、あまりミュージアム的な外観ではなく、見逃すところだった。

 まだ閉鎖中だったので少し周辺を散歩した後、改めて来てみると、学芸員の方が手招きして中に案内してくれた。

 入ってみてまずびっくりしたのは、数世紀前のチェンバロ、ピアノなどの古楽器が所狭しと陳列されていること。

 それも、ピアノの翼面にカラフルな絵が描かれている。

 まるで古きイタリアの風景が音楽を伴って見えてくるような錯覚にとらわれてしまう。

 絵のテーマはローマやその郊外の風景が多いという。

 さらに、建物も教会の面影を残して優美だ。

 こんな風にピアノの側面一杯に広がる絵もあった。

 そしてさらに驚くのは、上階に上ると部屋の壁面を埋め尽くすようにフレスコ画の世界が広がること。

 最上階の部屋は完全に360度のフレスコ画。

 1600年ころに描かれ始めた絵だが、最近になって建物修理の際次々とこれらの絵が発見されたという。

 作者もドメニキーノ、グイド・レーニなど著名な人たちが参加しているとのことだ。

 ちょうど演奏者が、夜のコンサートに備えて準備を始めたところ。ちょっとだけ古楽器の音色を聞くことが出来た。


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ボローニャ③ 絶望の叫びが聞こえる!井上ひさしも賞賛したヴィータ教会の「ピエタ」

2018-08-14 | イタリア・ボローニャ

 叫んでいる。それは張り裂けるような高い叫びではなく、腹の底から絞り出す地響きのような、唸り声に似た叫びだ。
 まさ師キリストの最期の場に、たった今駆け付けたかの如く着衣がなびく。

 その人はマグダラのマリア。娼婦から改心し、ひたすらキリストに仕え、一番弟子であるペトロさえも嫉妬にかられたとも伝えられる、忠実な使徒。
 そのマリアが十字架から降ろされたキリストの遺体を目の当たりにして発した断末魔の叫びが、これだ。

 ニッコロ・デ・ラ・ルカ作「ピエタ」(死せるキリストへの哀悼)。1463年の作品だ。

 横たわるキリスト

 それを6人の男女が見つめている。
 右から順にマグダラのマリア、隣にクロバの妻マリア、福音書記者ヨハネ、聖母マリア、マリアサロメ、アリマタヤのヨセフ。

 聖母マリアの顔も苦痛に歪んでいる。

 クロバの妻マリアは全身で驚きと悲しみを表現する。

 マリアサロメの顔もゆがむ。

 4人の女はそれぞれにこらえきれぬ悲惨と驚きとを全身で表現している。


 だが、ヨセフ、

 中央のヨハネの男2人は逆に悲しみを押し殺しているのか、まだこの状況に対する戸惑いに取りつかれているのか、表情を凍らせてしまっている。

 この男女の対比が何とも対照的で、何分も見比べてしまった。女性と男性とが決定的な瞬間に出会った時に、こうも違った表現を取るものなのだろうか。
 一つの典型をここに表現した。これほどの劇的な姿のありようはなかなかお目にかかることのないものだった。
 井上ひさしも「ボローニャ紀行」の中で、聖母マリアについては「その顔は苦悩にゆがみ、口からは今にも腸のちぎれる音が聞こえそう」。マグダラのマリアについては「駆けつけてきた勢いが、横になびく頭巾や着衣に見事に表れている」と、賞賛と共に描写している。


 「ピエタ」を表現した彫刻では、ミケランジェロがサンピエトロ大聖堂に残した傑作と並んで語られるほどの作品とも評価されているものだ。

 長い間立ち止まって見ていたためか、教会の尼僧が私に近づいてきて言葉をかけてくれた。「この教会の2階にも、もう1つのテラコッタ群像があります。ご覧になってください」。

 有難い。教えられるがままに奥まった所にある階段を上った。

 そう、ここにも群像が展示されていた。これは「聖母マリアの死」。アルフォンソ・ロンバルディ作。こちらにはさらに多くの人が登場している。

 聖母を迎える空中の天使。

 向かって右側。悲嘆に暮れる人々。

 まだ信じられず、呆然とする人たちも。

 絶望の叫びをあげる人。

 倒れ込む人。

 最後の場面に遭遇してしまった人たちの抑えきれない様々な裸の表情を描写した秀作。1つの教会でこんなにもバラエティに富んだ作品に出会えたことで、大収穫の1日だった。




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