新イタリアの誘惑

ヨーロッパ・イタリアを中心とした芸術、風景。時々日本。

イタリア・シチリア 聖金曜日の行列はシチリアの街で夜を徹して続けられた

2023-04-08 | イタリア・シチリア

 行進は市内各所をゆっくりと進む。次第に日が沈みミステリ(群像神輿)には照明が当てられた。

 キリストは、自らが吊るされることになる十字架を担がされ、その重みに耐えながらゴルゴダの丘に向かってゆく。

 行列にはロウソクを持った市民たちが続く。中には愁いを帯びた少女の姿も。

 トゲのあるいばらの冠をかぶせられたキリスト。行列は広い中央通りを進んでゆく。このころにはすっかり夜も更けてきた。

 ミステリの前後には音楽を奏でる楽団が続く。奏でられる音楽は悲しみを湛えたものになっていった。

 そしてついにキリストは十字架に吊るされた。

 傷心の聖母マリアは、ロウソクに囲まれた中を進む。悲痛な表情がろうそくの炎の中で揺れる。

 ミステリを担ぐ人たち。長時間の行進で相当に疲れただろうが、それでも誰も弱音を吐かない。

 ブラスバンドの人たちも様々。楽曲が街に流れ、市民たちも総出でその行進を見守っている。

 それを追いかけるだけの私でも、さすがに疲れた。途中で行列を離れ、近くのトラットリアで夕食。そのままヴィットリア広場のホテルに戻った。

 すると、しばらくして通りから音楽が聞こえてきた。ホテルの窓から見下ろすと、あの行列が観客とともにこの広場に到着していた。こうしてキリストの行進は夜を徹して続けられ、翌朝の8時に終了した。

 この行進はキリスト教信者にとっては最大限に重要な行事となっていて、特にイタリア南部の街では、言ってみれば京都の祇園祭のような欠かせないもののようだ。私にとってもトラーパニの熱狂の1日は後々まで心に残るものとなった。

 

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イタリア・シチリア いよいよキリストの逮捕から十字架へのドラマチックな行列が始まった

2023-04-04 | イタリア・シチリア

 いよいよ聖金曜日の本番当日がやってきた。

 天気は快晴で、絶好の祭り日和だ。

 朝、中心街のヴィットリオ・エマヌエーレ通りに来てみると、さわやかな朝日が街路に差し込み、街全体が行進のスタートを待ち焦がれているようだ。かなり早い時間に通りに来たのは、行進をできるだけ正面からカメラに捉えようとロケーションを探すため。

 そんな中、父と子の二人連れが大きな風船の束を抱えて歩いていた。これはたぶん商売用の風船で、出店の開店準備に来ていたのかも。だって、買ったにしては多すぎるもんね。

 そうしているうちに街頭には観客が続々と集まってきた。午後2時、いよいよ「聖キリストの行進」のスタートだ。先頭には鼓笛隊。女性を中心にした太鼓のリズムがはじける。

 その後ろには地方の旗を掲げる子供たちなどの列が続く。

 そしていよいよミステリ(神輿)の登場。左の聖母マリアに別れを告げるキリストのシーンだ。こうしたミステリが20台、若者たちに担がれて街を練り歩く。いやいや担ぎ手は若者たちだけじゃなく、結構な年配のおじさんたちも多い。

 そうした群像の合間合間に人々の行列が続く。巫女さんのような白装束の集団もあった。

 キリストは、彼を裏切ったユダに導かれたユダヤ人の衛兵によって逮捕され、ローマ兵に引き渡される。早くも一つのクライマックスが到来した。

 キリストは鎖でつながれてゴルゴダの丘に連れて行かれる。果たしてキリストの運命は?

 

 

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イタリア・シチリア島に、キリスト教最大級の行事「聖キリスト死の行進」を見に行った

2023-04-01 | イタリア・シチリア

 今年の復活祭(イースター。イタリア語ではパスクワ)は4月9日。十字架にかけられたキリストの復活を祝う、キリスト教最大級の祝日だ。

 復活祭の2日前、聖金曜日にはイタリア各地で「死せるキリストの行進」という行事が行われる。

 キリストが逮捕され、十字架にかけられるまでの過程をたどる行列。その催しを見たいと数年前、シチリア島の外れにある街トラーパニに出かけた。その模様を紹介しよう。

 シチリアまでの直行便は出ていない。さらにJALはイタリア便さえもだいぶ前からなくなっている。従ってルートは羽田~パリ~ローマ~シチリア(パレルモ)と飛行機を乗り継いで、そこからはバスでトラーパニに向かった。日本出発から23時間という長い旅だった。

 トラーパニの位置はシチリア島の北西端にあたり、目の前に海が広がる。「この先は地中海」と思ったら、「いやいや、そっちはティレニア海だよ」と、地元のおばさんが教えてくれた。

 実は、トラーパニの長く伸びた岬の先端で向かって右側(北)がティレニア海、左側(南)が地中海になるというのだ。

 つまり、この街の先端が、2つの海の境目になっている。これまで海の境目などということを意識したことなどなかったので、ちょっと感激。また、海の向こうに見えるのはアフリカ大陸で、チュニジアも見える。新しい体験になった。

 さて、この日は「聖キリストの行進」の前日。明日行われる行列の出発点となる教会を確かめておこうと出かけた。

 途中、町の中心であるヴィットリオ・エマヌエーレ通りはきれいに整備されて美しい通りだ。

 プルガトリオ教会に着いた。17世紀の教会で、行進はここから始まる。

 扉が開いていたので中に入ってみると、高さ4mもある群像神輿(ミステリ)がところ狭しと並んでいた。これは、キリストが邪教を広めているとの容疑で逮捕され、死刑になるまでの過程が20の場面に分けて群像劇に仕立てられており、このミステリが長時間かけて街を練り歩くわけだ。

 それぞれのミステリには精巧に作られた人間(人形)が載っており、迫真の表情がうかがわれる。

 また、準備を進める地元の人たちもはつらつと作業に取り掛かり、教会内は熱気むんむん。

 明日の本番への期待に胸を膨らませながら、万国旗がたなびく通りをホテルに戻った。

 

 

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