浅草・浅草寺の境内で開かれた恒例の羽子板市(歳の市)に出かけた。
浅草に到着したのは午後3時過ぎ。外国人観光客も含めた人出でにぎわう仲見世を通り過ぎ、境内に入ると、本殿に向かって左側に羽子板を売る出店が数十軒軒を並べていた。
吉徳、久月など、人形で有名な店も含めて、各々の店には天井まで届く高さに羽子板が掲示され、まさに歳末の風情満点。
店をのぞいてみると、やはり着物姿の女性を描いた羽子板が主流。歌舞伎の演目にあるテーマの装いをした女性像が目に付く。
この姿などはまさに大和なでしこの典型的な美しさ。
こうした女性たちの顔立ちは、和装でイメージする喜多川歌麿などの美人画に比べると、ずいぶん丸みを帯びている。現代の美人像は、よく見る長い顔の浮世絵とは変わってきているということなのかもしれない。
顔立ちにもやはり流行はあるようだ。角度も大半は斜め45度の横顔が主流。
柔らかい指の動きも優雅だ。
こちらは藤娘のしっとりとした姿。
男顔はほとんど歌舞伎役者の舞台姿。連獅子や助六などといった姿が見られた。
伝統的なものばかりではなく、似顔絵の羽子板も。「35億」でブレークしたブルゾンちえみ。
ベテランでは黒柳徹子と西川きよし、ヘレン夫妻。
「やばいよ、やばいよ」の出川哲朗。
売買が成立すると、337拍子の拍手がわく。
数千円から数万円まで順調に売れていた。
場所が浅草寺の境内だけに、建物の姿にも引き付けられる。
夕暮れにライトアップされた本殿の堂々とした姿。
五重塔とスカイツリーが一枚の写真に納まる貴重なスポットがあった。
その五重塔は時間とともに刻々とビジュアルが変化する。
まず、日が沈んでシルエットが浮かぶ。
照明が当たり始めて次第に赤味を帯びてきた。
しっかりと輝きを放ち始めた。
青く沈みだす空と対照的に光を増した五重塔。
宝蔵門越しに見るスカイツリーも存在感を増していた。
江戸の情緒と現代の象徴とが一度に見える楽しみをたっぷりと味わった夜だった。