新イタリアの誘惑

ヨーロッパ・イタリアを中心とした芸術、風景。時々日本。

階段紀行・ヨーロッパ スペイン編② カサバトリョ下 ガウディの構造物の頂上では、孤独な群衆が無言で夜空を見上げていた

2022-02-26 | 階段紀行・ヨーロッパ 

 カサバトリョの屋上に上ると不思議な風景が広がった。孤独な人々の集団を思わせる構築物が、夕景の中に屹立する。

 まさにドラゴンの背骨、という表現がピッタリの曲線が突き出ている。

 その横では、円柱のタイルが空に向かって伸びる。

 次第に闇が深くなり、構築物は完全にシルエットに変化した。その様は、無言で暮れ行く空を見つめる群衆の姿ともオーバーラップする気がした。

 ライトに照らされた先端は、むき出しの怪獣の歯のようだ。

 夢中で屋上を徘徊しているうちにもう夜も更けてきた。ぼちぼち地上に戻ることにしよう。

 下りの階段。深い地下に導かれて行くような気分になる。

 タイルに包まれた空間を歩いて行くと、かすかに外の照明を感じる場所まで導かれる。

 外に出た。建物の真下から、複雑に屈折したファザードの波動を感じながらさっきまでうろついていた屋上を見上げる。

 最後に、赤くカラーチェンジさせてシャッターを切り、曲線だらけの造形世界と別れを告げた。

 

 

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階段紀行・ヨーロッパ スペイン編① カサバトリョ上 ガウディの魔術が前面に展開される建築の芸術

2022-02-22 | 階段紀行・ヨーロッパ 

今回からヨーロッパの階段のうち、スペイン編に入ります。まずはガウディ作品から。

 バルセロナはアントニ・ガウディの作品があふれている。中でもサグラダ・ファミリアが有名だが、ここでは個人的に大好きなカサバトリョの階段を紹介しよう。

 この建物は、正確にはガウディが建てたものではない。元々は別の建築家が設計したものだったが、改修を依頼されたガウディが、ほぼ全面的にリニューアルして全く別の建物にしてしまった。

 正面、外観は海のうねり、内部は海底をイメージしたとされ、波打つ光が反射するファザードはまさに海を思わせる。中に入ろう。

 エントランスホールの階段は衝撃的。急角度に上昇する手すりが、見るものを釘付けにする。

 アップすると、まるでドラゴンの脊椎のように固く光る木製の階段だ。

 階段脇にさりげなく置かれた装飾物。昆虫を思わせる不思議な形状。

 上った階にあるメインのサロンは、深海から空を見上げているような異次元空間の雰囲気に満たされている。

 窓に取り付けられたステンドグラスも、まさに水泡のようにぷっくり。

 壁面には、果てしなく円の世界が広がる。

 そして天井は境目のないおぼろげ状態の空間が覆う。

 さらに上の階へ。階段の曲線がまた優雅だ。この上にも各所にガウディの魔術が展開される。

 

 

 

 

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階段紀行・日本 東京編㉒ 三越本店の天女像を取り囲む4つの階段、渦を巻くスポーツジムに通じる階段

2022-02-19 | 階段紀行・日本

 銀座松屋デパート近くにあるビルで螺旋階段を見つけた。金属製のハードさが前面に出る印象だ。

 大規模ではないが、どっしりとしたたたずまいが、いかにもスポーツジムに通じる階段らしい。

 金色に輝く手すりの輪が、上へ下へと渦を巻いて旋回する。

 下から階段を見上げていると、一瞬その底辺がバンドネオンの蛇腹に見え、激しいタンゴのリズムが吐き出されるかのような錯覚をもたらしてくれた。

 三越日本橋本店一階には有名な天女の像が飾られている。

 この像は1960年佐藤玄々作で、空から天女が舞い降りる瞬間を形にしたものだ。ヒノキ材を使っており、高さは台座から11m。入口にあるライオン像と共に三越本店の「顔」として親しまれている。

 像を中心にして、両脇に階段が設えられている。

 後方にも斜めに階段があり、天女像の存在を引き立たせる効果をも、これらの階段が担っていることがわかる。

 改めて、天女像をとっぷりとご覧あれ!

 

 

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階段紀行・日本 東京編㉑ 明治期の趣を継承した深川図書館の螺旋階段

2022-02-15 | 階段紀行・日本

 江東区の清澄庭園すぐ南隣にある深川図書館は1903年の創設だ。まだ東京市だった明治初期に、日比谷図書館に次ぐ2番目の市立図書館として誕生した。

 その後、関東大震災、東京大空襲などで被災し、現在の建物は1993年改修の3代目となる。

 だが、以前の建物のイメージを継承しており、十分に趣を持った建物になっている。

 階段は木製の螺旋階段。ゆったりとしたカーブを描いて上下の階を繋いでいる。

 この角度で見ると、ステンドグラスの存在も洒落たアクセントになっている。

 手すりの細工も丹念に施されており、愛おしささえ感じさせる。

 脇から見上げると、改めて結構な高さがあることがわかる。

 それだけに、上階から下ってくるた手すりの傾斜角度もかなり急。落下のスピードを思わせる流れが出来ている。

 

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階段紀行・日本 東京編⑳ 関東大震災の復興事業で新たに上下の道を繋いだ男坂、女坂

2022-02-12 | 階段紀行・日本

 ここまで3回の男坂、女坂はいずれも神社へ通じる坂道階段だったが、今回の階段だけは神社仏閣とは全く関係ない場所にある男坂、女坂だ。所在地は駿河台2丁目と猿楽2丁目の間。

 男坂はスッキリとした一直線、73段の階段になる。結構な高さだ。

 観察した昼下がりの時間帯にここを上下するのは学生の若者たちが中心だった。聞くと、階段上には明治大学の校舎があるためで、学生の利用率が高い階段だという。

 遠目から眺めると、上方に歩道橋が横断してる。

 男坂を上って少し南に進むと、今度は女坂が出現する。こちらは直線ではなく、回転するように曲がりながら下って行く。

 それだけに段数は増えて82段。踊り場が途中3か所に設けられている。

 この階段を使って少し進むと、フランス語教室の老舗アテネ・フランセの建物が見えて来る。

 調べて見ると、これらの階段の上と下の道とは、元々崖で分断されていた。それが、関東大震災後の1924年の帝都復興区画整理によって、上下の道を繋ぐための坂道が造成され、このような階段が新設されたのだという。

 従って、元々名前のない道だったので、新たに、神社などにあってなじみやすい名前が付けられたもののようだ。

 このように、土地の歴史が、階段によって浮かび上がることもある。

 下の道を行くと、すぐにカトリック神田教会に出会う。ゆったりとした空間にロマネスク風の建物が存在感たっぷりに立ち上がっている。

 

 

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