新イタリアの誘惑

ヨーロッパ・イタリアを中心とした芸術、風景。時々日本。

階段紀行・日本 東京編㉕ 池上本門寺、新橋停車場。長い歴史を思い起こす階段がそこにあった。

2023-04-29 | 階段紀行・日本

 日蓮宗の大本山である池上本門寺は、日蓮上人が亡くなられた場所である武蔵国池上に築かれた寺。

 五重塔は、現存する関東の五重塔の中で最も古い(1607年)塔として有名だ。

 入口から高い階段を上るので、上り終えて下を見下ろすとこんな風にはるか遠くまで見通せる。

 法要の行われた日に訪れたため、日没時には階段に明かりが灯されて、ちょっと厳粛な気分。

 さらに暗くなると、階段両脇のロウソクの灯が輝きを増した。一層心静かに階段を踏みしめて帰途についた。

 JR新橋駅から5分ほどの所に、日本鉄道史のスタートとなった記念すべき場所がある。「旧新橋停車場」。

 我が国初の鉄道は今から151年前の1872年、新橋ー横浜間に敷設された路線だった。10月14日の開業日には明治天皇自らがお召列車に乗車、始発駅となった新橋停車場を発車して横浜までの運行が始まった。

 その新橋停車場には、ちょっとした悲劇が付いて回った。鉄道開通の47年後、新しい中央駅として東京駅が開業したことで、新橋停車場は貨物専用駅に転換された。さらに1923年の関東大震災によって駅舎は焼失してしまう。建て直された汐留貨物駅も1986年には営業を終了、広大な敷地は一時、跡地のままにされていた。

 近年になってようやくこの跡地は再開発で超高層ビル群の建つ現代的な姿に生まれ変わった。そうした中で2003年、1872年当時の建物が復元されて、鉄道歴史展示室として現在に至っている。

 そんな建物の中にあるのがこの階段だ。濃いブルーの敷物のためか重厚さが伝わる。

 金属製の手すりが印象的。列車の車輪をイメージして造られたのではないかとも思わせるデザインだ。

 上階から見下ろす階段。明治の元勲が歩いたのであろうと考えると、長い歴史を思い起こさせる佇まいに感じる。

 

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階段紀行・日本 東京編㉔ 「とらや」ヒノキ造りのらせん階段、都心のオアシスのような丹後坂階段

2023-04-25 | 階段紀行・日本

 和菓子の老舗「とらや」がリニューアルして2018年10月新しくなり、美しい階段が設置された。昔、ここの羊羹を「とても高価なお菓子だよ」と言われ、少~しずつ友達と分けて食べたことが、懐かしく思い出される。

 青山通り沿いに扇状の店舗。道路側はガラス張りで、外からも階段の姿が眺められる。

 1階から2階への階段。わずかにカーブを描いて上昇してゆく。

 商品が並ぶ2階からもう1段上への階段も。

 上って見下ろす階段。見事に円を描く。ヒノキをたっぷりと使い、温かい色調が空間全体をふんわりと包み込む。

 角度を変えると、アールのシャープさをも感じることが出来る。また下部の床はダークな色調のため、木の陰影も感じられる。

 手すりの木彫もしっとりとして、居心地は抜群。

 おっと、ここは通過する場所なのに、つい座ってみたくなってしまった。

 「とらや」から数分のところにある丹後坂の階段。中央に植栽があって、二手に分かれた階段が構成される。これからの季節には、暑さを避けられる、この坂を覆う木陰がとても有難いだろうな。

 甲斐武田氏の家臣、戦国武将の米倉丹後守の屋敷があったため、その名前が坂の名称になっている。

 上下にも大きく4段階に分かれていて、傾斜の具合も少しずつ異なっている。

 上段に進むと、幅がかなり狭くなっていく。赤坂という都心部でもちょっと脇を通るとこんな静かなスペースがあることに驚く。

 

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階段紀行・日本 東京編㉓ 松濤美術館の、温かくしっとりとした螺旋階段

2023-04-22 | 階段紀行・日本

 今回から再び「階段紀行」の東京編に戻ります。まだまだ東京にはいろいろな階段がありますよ。

 渋谷の高級住宅街にある松涛美術館は、周囲との調和を考えてかしっとりと落ち着いた外観になっている。

 階段は少々暗めの照明だが、踊り場付近の照明によって、温かい色調が支配する。

 少し階段を上ると、左手の手すりが延びて自然に上方に導かれる。

 上階に上って下を見下ろす。楕円形の縁取りの中に、階段がリズミカルにテンポを刻んでいる。

 見る角度によっては、手すりの土台にある白い枠が、アクセントとして浮き出すような感じにさせられる。

 踊り場に設けられたスペースには、小さな彫刻作品が納められていて、上る途中の観客に喜びをプレゼントしてくれる。

 美術館としては異例中の異例、館内に噴水があり、階段から見下ろすことが出来る。

 段の1つ1つが直線と曲線とによってつながる様が、上か上からの俯瞰でよくわかり、その連続が絵画作品とはまた違った楽しみを与えてくれた。

 

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階段紀行・フランス アミアン大聖堂の説教壇、サンポール・ド・ヴァンスの小道の階段

2023-04-18 | 階段紀行・フランス

 フランス北部のアミアンにあるアミアン大聖堂は、中世ゴシックを代表する大聖堂として名高い建築だ。

 その聖堂内にある宣教師の説教壇は見逃せない。ゆったりとカーブを描く手すりに施された装飾は、非常に丁寧な仕上げになっており、堂内の照明を受けて金色に輝く。

 下部には彫像が刻まれ、柱を囲む階段の存在を一層強調する役目を果たしている。

 この大聖堂は夏や冬にはライトアップされて美しく夜空に浮かび上がる。またプロジェクションマッピングも行われるので、機会があればぜひ訪れていただきたい。

 ニースの街からバス400番で40分ほどの高地にあるサンポール・ド・ヴァンスは、素晴らしい景観と落ち着いた街並みが魅力的な街だ。

 19世紀から画家、詩人、作家などの芸術家が多く滞在して芸術的な雰囲気が漂う。そんな村内にこんな階段がある。まるで童話の世界にでも出てくるかのようなたたずまい。

 シャガールは晩年、ここに20年も住み、墓もこの村内の墓地に建てられている。

 もちろん階段のところは車も入らないので、ゆったりとのんびりと散策するのに最適だ。

 通りにあるあちこちの店には、このような芸術的な作品が飾られていて、歩くだけで時間の過ぎるのを忘れてしまう。

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階段紀行・フランス ランス・サンレミ聖堂の階段に、ある瞬間奇跡的に華麗な光の装飾が施された!

2023-04-15 | 階段紀行・フランス

 シャンパンの主産地であるシャンパーニュ地方の都市ランス。かつてはここの大聖堂で戴冠式を行うことがフランスの王位に就く条件とされていた。ジャンヌダルクがシャルル7世を引き連れて戴冠を実現させたのも、この大聖堂が舞台だった。

 そんな都市にある、大聖堂に次いで2番目に大きな教会がサンレミ聖堂。ロマネスクとゴシックが共存した重厚な建築だ。

 中を見学しているとき、ある現象を見つけた。ちょうど夕方になるころ、日の光が斜めから堂内に差し込んでいた。その光が手前にある装飾された仕切りの模様を階段に映し込んでいる。

 それは、まるで計算されて光を照らし出しているかのように、階段の段ごとに円や直線のデザインを刻んでいた。

 そんな、一瞬でしか巡り合えないような光景に出会えるのも、フリーに時間を費やして気ままに歩く旅のスタイルが、もたらしてくれる幸運だ。

 また、大聖堂の主祭壇にも、印象的な階段があった。大理石を使った輝く階段だ。

 訪れた年、大聖堂は創建800年の記念プロジェクションマッピングが行われた。

 大聖堂壁面に写し出される豪華な「夢の教会」に、興奮がマックスになって見入ってしまった。

 800年前には実際にこうした装飾がなされていたとのこと。日本でいえば鎌倉時代にこのような豪華で巨大な建築があったことにも驚きと感動があふれる気持ちだった。

 

 

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