今回は西洋美術館所蔵の著名な画家の作品を見て行こう。
モネ「舟遊び」
戸外の明るい午後、2人の女性がボート遊びを楽しんでいる。見るからに優雅な姿。だが、個人的には主役はこの女性たちではなく、それを包み込むかのように降り注ぐ光のように思える。開放的に広がる明るさが、見る者の心をとらえて離さない。
また、大胆に船を半分に切り取った構図は、北斎の絵に見られるような浮世絵の手法が取り入れられている。ジベルニーのモネの家を訪れた時、家の中に多数の浮世絵が飾られていたのを今でも思い出す。
ルノワール「アルジェリア風のパリの女たち」。
御存じ印象派を代表する1人であるルノワール。この絵は戸外の風景ではないが、温かい色彩、豊満な女性の肢体、室内のあでやかさなど彼独特の、人を引き付ける魅力にあふれた作品だ。
ピカソ「男と女」。
男女が裸でもつれ合っている。底なしに豪快、全くためらいというものを感じさせない自由奔放さ。この絵がピカソ88歳の時に描かれたというだけでも、ひたすら恐れ入ってしまう。まさしく世紀最大の画家だ。
ロセッティ「愛の杯」。
一方こちらは何が不満なのかうつろな瞳が空を泳いでいる。イギリスの画家ロセッティが描く女性は、いつもどこかに秘密を抱え込んだ表情だ。ただ、その神秘性ゆえにこの女性が魅力的に映るのかもしれない。
ここからは子供たちを描いた作品を。
ルーベンス「眠る二人の子ども」。
バロック絵画のドラマチックな作品を多数残した巨匠だが、こんな愛らしい作品も手掛けている。モデルは彼の兄の子供たちということだが、今にも安らかな寝息が聞こえてきそう。赤らんだほほと柔らかな髪を思わず撫でてみたくなってしまう。
ジョン・エバレット・ミレイ「アヒルの子」。
水辺にたたずむ少女がいる。体よりも大ぶりな服に、粗末な靴、髪も整えていないままだが、じっと前を見詰めるその瞳は、純粋な心を十二分に表現している。見る側にとっても、ただいつまでもこの娘を見守っていたい思いにさせられる。
ウイリアム・アドルフ・ブーグロー「少女」。
夜ベッドに入る前に行う祈りの時間。うるんだ大きな瞳と,合わせたふくよかな指。当時のパリで流行し始めた印象派を否定するサロン勢力の一員だったが、サロンが主張する「美」というものの1つの典型として見る事の出来る絵なのか、とも思える。
ポール・ゴーギャン「海辺に立つブルターニュの少女たち」。
ブルターニュ地方の民族衣装に身を包んだ素朴な少女たち。都会から来た見慣れぬ訪問者には不安なまなざしを向けている。背景には緑豊かな山野が広がる。
文明社会と決別してタヒチへ旅立つゴーギャンの心境の変化が、この絵からも読み取れる気がする。