新イタリアの誘惑

ヨーロッパ・イタリアを中心とした芸術、風景。時々日本。

心ふるえる風景 パリ編㉟ 大都会の建築群のかなた 荘厳に沈みゆくパリの夕陽

2024-10-29 | 心ふるえる風景 パリ編

 ある日の夕刻 モンパルナスタワーに上った

 1972年に完成したこの超高層ビルは 高さ210mとパリでは飛び抜けて高い

 ここで大都会の夕陽を見てみたい と思いついたためだ

 

 海に沈む夕陽は 旅先で何度も目にしてきた

 しかし都市の建築群のかなたに 沈んでゆく夕陽の姿を

 何の障害物もなしに 見続けることはなかなかない

 それがこのタワーからは 可能だと思ったからだ

 

 展望台に上ると パリの街が一望できる

 モンパルナスの丘の上に立つ サクレクール聖堂も

 普段は見上げてきたが ここだと見下ろす角度に眺められてしまう

 

 そのうちすき間なく建て込んだビル群が 次第に夕闇の中に沈んでゆき

 眩しく輝いていた太陽が 刻々と朱色の球となって地平線に近づく

 さっきまであれほど強い光を発していた球体が

 もうまるでとろけるかのように 暗色の色彩に変化し

 周囲の空を焦がしながら 静寂の中に没して行く

 

 高みから見る都会の日没 それがこんなにも荘厳なものだとは

 思いもよらなかった

 そして海の日没と違って この瞬間の時刻を過ぎると 

 都会には喧騒の夜が幕を開けることも 改めて思い起こす時でもある 

 

 

 

 

 

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心ふるえる風景 パリ編㉞ セーヌ河岸で「呼吸するビル」に出会った

2024-10-26 | 心ふるえる風景 パリ編

 セーヌ河岸シュリー橋近くに 全面ガラス張りの近代的ビルが建っている

 アラブ世界研究所で 10階建てのスマートな建物だ

 このビルには 他では見られない特別な装置がある

 

 名付けて「呼吸するビル」

 広い壁面全体に張られたガラス窓が 差し込む陽の光に合わせて

 自動的に開いたり閉じたりするという システムが組み込まれているのだ

 

 仕組みを説明すると 窓の裏側に光電管が設置されていて

 日光が当たる場所は カメラの絞りのように窓が閉じられ

 影の部分は 窓が開くというものだ

 これによって室内の光量は一定に保たれ 中の人たちは快適なオフィス生活ができるわけだ

 建物内に入って 窓の裏側(室内側)からみると こんな具合だ

 ただ単に丸い穴があるだけでなく 他にもひし形六角形八角形など

 さらに風車のような形もあり 大小さまざまに変化している

  

 それが日光の当たり具合で まるで自由自在に変化してゆく様は

 いつまでも見飽きない芸術作品に 出会ったような気分だった

 

  設計者のジャン・ヌーヴェルはフランス人建築家で

 建築界のノーベル賞といわれる プリッカー賞を受賞している

 

 

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心ふるえる風景 パリ編㉝ パリが飲み込んだ 異次元のアールヌーヴォー建築

2024-10-22 | 心ふるえる風景 パリ編

 エッフェル塔の東側にあるラップ通りに 何とも奇妙な装飾の建築がある

 名前はラヴィット邸

 建築家ジュール・ラヴィットと 陶芸家アレクサンドル・ビゴのコンビが完成させたものだ

 

 正面入口の扉に周りは 明らかに過剰と思える装飾で埋め尽くされている

 中央上部に据えられた女性像は 見るからに憂鬱そう

 その上方には左にイヴ右にアダムと 人類の創世を象徴する二人

 

 ファザードは石材 鉄 木材 ガラスなど 様々な素材を組み合わせた模様が広がり

 扉にはクジャクやトカゲなどが 奇妙に徘徊している

 この20世紀初頭のアール・ヌーヴォー建築は ただ独特という表現では捉え切れない異彩を放つ

 1905年のパリ市ファザードコンクールで入賞し 現在は歴史的建造物に指定されている

 

 パリはこれまでも他国の無名芸術家の卵を 多数受け入れてきた

 そして彼らにエッフェル塔建築を許し ルーブルの庭にピラミッドを造らせた

 

 パリという都市が いかなる表現をも飲み込んで

 自らの栄養にしてしまうという 異次元の懐を持つことが

 この建築の例を見ても はっきりとわかるような気がする

 

 

 

 

 

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心ふるえる風景 パリ編㉜ 夜11時過ぎにようやく捉えた「ヴェルサイユの花火」

2024-10-19 | 心ふるえる風景 パリ編

 歌のショーが終わった午後9時 庭園に出た

 フランスは夏時間を採用していることもあって まだまだ太陽は沈まない

 庭から見る宮殿は フランス絶対王政時代の栄華を象徴するように堂々としている

 装飾模様があしらわれた花壇が点在し 各所に彫像群も配置されている

 

 午後10時過ぎようやく日没が始まり それに合わせて噴水ショーが始まった

 11時いよいよ花火の時間が来たが まだ始まらない

 ヴェルサイユからパリ市内への RER最終電車は11時20分

 とにかく少しでも花火を見なければ せっかくのヴェルサイユ訪問も不完全燃焼になってしまう

 焦り始めた時 ようやく夜空に火柱が上がった

 一発目の花火だ それから数発続いた後 少しの間隔が空く

 もうやばい

 とにかく最初の花火が フィルムに映っていますようにと願いながら

 急ぎ足で RERの駅に直行した

 パリ13区のホテルにたどり着いたのは 午前0時30分になっていた

 その貴重な「ヴェルサイユの花火」が この1枚

 

 でも今思えば 最終電車はそれほど込み合ってもいなかった

 多くの観客たちはあの夜 どのようにしてパリに戻ったのだろうか

 大半の人たちは 宮殿近くのホテルなどに泊まったのか

 それとも車で移動する人たちが 多数派だったのだろうか

 今でもこの不思議については 疑問が解消されていないままだ 

 

 

 

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心ふるえる風景 パリ編㉛ ヴェルサイユ宮殿の広間で ルイ王朝時代の歌曲に酔う

2024-10-15 | 心ふるえる風景 パリ編

 よく晴れた7月 パリの中心部からRER線に乗ってヴェルサイユに向かった

 実はヴェルサイユ宮殿で 歌と花火の催しがあることを知り予約したためだ

 RER線のリヴゴーシュ駅から 歩くこと約15分で宮殿に着いた

 

 まず最初はネットで予約していた セレナーデ会場へ

 宮殿の広間では 中世の衣装を着た女性と古楽器奏者が控えていた

 短い挨拶の後 歌唱が始まった

 女性歌手の澄み切った声が 朗々と広間一杯に響き渡る

 多分この歌はヴェルサイユ最盛期時代 17世紀の歌曲なのだろう

 この宮殿は太陽王ルイ14世の掛け声で 建設が始まった豪華絢爛の館 

 最も有名な鏡の回廊は 幅10m奥行き73mの大ギャラリーで

 きわめて高価だった大型鏡が 17枚も使用された空間

 マリーアントワネットとルイ16世の 結婚式が行われた礼拝堂や

 オペラ劇場まで実在した 贅の限りを尽くした場所だ

 

 そんな建築の一角で 高らかに歌い上げられる歌曲を聴いているうちに

 いつの間にか時間を飛び越えて ルイ王朝の世界に

 身を置いているかのような 気分に浸っていた

 

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