ニース。コートダジュールの海岸で夕陽の空を見ていると、飛行機が近づいてきた。なるべく機体を大きく撮ろうとズームにして狙ったところ、背景の空が何重にも変わった色彩になっていた。それも飛行機を停めた形で撮影したせいか、雲が横へ横へと逃げて行くように画面に収まり、面白い姿になってくれた。
そんなコートダジュールの夕景。海を赤く染めた夕陽は次第に水面から消えて行ったが、残された雲はオレンジから紫へと変化していた。
マジョルカ島からの帰り、バルセロナ港に近付いた頃、港の上空に赤味を帯びた鮮烈な形態の雲がたなびいていた。スペインはダリやピカソなどインパクトの強い画家や建築を生み出したが、空の雲もまた鮮やかなものだった。
バチカン大聖堂の屋上に立つ聖人像を狙ったところ、その奥に浮かぶ夕焼雲がふんわりと空一面に沸き立つ様がカメラに収まってくれた。この写真の撮影日は12月21日。間もなくクリスマスということでローマの街ではあちこちにクリスマス市が開かれて賑わっている時期だった。
地中海に浮かぶプロチダ島という小さな島。夕方の風景はとても美しかったが、その中で対岸にあるイスキア島の山を眺めていると、山の右側にイスキアの山とそっくりな形をした雲が浮かんでいて、次第にピンクに染まって行った。思いがけず自然の造形の面白さを味わった。
お台場の夕方。海辺に並んだ港の運搬機材は遠くから見るとまるでキリンの集団がいるかのように見えて楽しい。その上空では、オレンジから青へと移り行く空の色。さらに高い高い秋空に、刷毛で掃いたかのような薄い雲が全面に広がっていた。
こちらはローマ。サンタンジェロ橋上にはベルニーニの天使像がずらりと並ぶ。シルエットを楽しんでいたら、突然大砲から打ち出されたような雲が、天使めがけて飛び出した。一瞬眼を疑うような異形の雲だった。
トスカーナの地方都市モンテプルチャーノに泊まった日。強い風が一日中吹いていたが、その影響か夕陽を浴びた雲たちも、おとなしくまとまることなく上下左右、自在に形を変えて踊り続けていた。
富士山の山頂に夕日が沈み、それをシルエットにして空が光り輝く。ダイヤモンド富士を期待して出かけたが、あいにく雲が邪魔をして太陽はわずかのところで隠れてしまった。でも、こんな風にたなびく雲もまた面白い。
ヴェネツィア本島からラグーナを渡って隣りにあるキオッジャの街に行った帰り、連絡船の甲板で海上を見ていると日没になってどんどん上空が青味を増していく中、上空の夕焼雲が墨絵のように模様を描き出した。周囲は何もない海。まるで別世界に一人佇んでその模様を眺めているかのような想いに囚われていた。