「東京花火」
今日まで 幾つ渡ったことか
古い年から 新しい年へ
架け渡される 時のあの橋
どこぞの都(まち)の 大橋のような
華やいだ橋を ひとと渡った年もあった
たよりなく揺れる 吊り橋を
きり立つ崖と 谷間の間に怯えながら
ひとりで渡った 年もあった
人間の持つ煩悩の数を 打ち鳴らすという
除夜の鐘の ひびきの中に
ことしも 架け渡されるであろう橋のことを
師走の ひととき
茶を喫しつつ 思っている
(新川 和江)
「TACYON」