新イタリアの誘惑

ヨーロッパ・イタリアを中心とした芸術、風景。時々日本。

ヴェネツィアあちこち⑮  夕暮れから夜へ。ヴェネツィア滞在最後の日、サンマルコ広場で見つめた光と闇 

2019-10-15 | イタリア・ヴェネツィア

 サンマルコ広場に夕暮れが近づいてきた。ライオン像を載せた円柱と鐘楼が背比べをしている。

 その鐘楼の横に出ている月はちょうど半月。

 まだ、マッジョーレ教会側の空は明るいが、ゴンドラの影が長くなってきた。

 西の空に夕陽が沈んでゆく。

 鐘楼の存在感が、さらに増してくる。

 旗を掲げるポールの先の像が、雲をバックにシルエットを描く。

 聖堂のサンマルコ像が、夕闇の青空に包まれ始めた。

 中空の月が輝きを増してくる。

 広場横の行政館に照明が入り、一気に華やかさを纏う。

 街灯の明かりが強くなった。対岸のマッジョーレ教会は闇に沈もうとしている。

 その教会と、彼方に広がる船誘導用のランプが、海面に光の円を描いて浮かび上がった。

 サンマルコ大聖堂は、黄金の輝きでヴェネツィアの夜を支配し続けている。

 

 

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ヴェネツィアあちこち⑭ アラカルト。月と像、石臼ばあさん、混雑橋、消防船、情けないライオン・・・

2019-10-12 | イタリア・ヴェネツィア

 ヴェネツィアを散歩中に目に留まったあれこれを紹介しよう。

 まずは、スキアヴォーニ河岸にあるV・エマヌエーレ2世像の剣先に、ちょうど月が刺さった瞬間。ちょっとレア。

 月といえば、サンマルコ小広場のサンマルコ像が月を背負っているところも1枚。

 メルチェリエ通りの、サンマルコ広場入口付近アーケード上に、石臼を抱えたしわくちゃばあさんが通りを見下ろしている。このばあさんはルチア・ロッシさん。

 実は彼女は反乱軍鎮圧のヒロインだ。1310年反乱を企てた軍勢がドゥカーレ宮殿に向おうとした。それを見つけた彼女は通りの窓から石臼を投げ落とした。この石臼が旗手の頭に命中、大騒ぎとなり、これを察知した総督の部隊が反乱軍を鎮圧することが出来た。そんなヒロインを後世に伝えるために、こうして石臼ばあさんの肖像が残されたという。

 次に、広場の鐘楼からの眺め。鐘楼が街並みにしっかりと影を落としていた。

 その鐘楼から見たリベルタ橋。ヴェネツィア本島と陸とをつなぐ唯一のルートだが、あまりその全体を見る機会はない。

 橋つながりで、満員のアカデミア橋。

 こちらはため息の橋横の橋。サンマルコ広場に向かう人たちの群れだ。

 さらに、カンナレージョ地区にあるトレアルキ橋。この辺りは普段はそれほど混雑しないが、この日はヴォガロンガというボートレースがあったため、橋の上は鈴なり状態だった。

 そんな混雑に疲れてしまったのか、カフェに入ったとたんに眠り込んでしまった赤ちゃん。

 一方、カステッロ地区はとても静か。賑やかなのは、空中に翻る洗濯物だけ。

 そんなカステッロ地区、アルセナーレ(国営造船所)近くのサン・マルティーノ教会前にあるライオン像は、ヴェネツィアにある数多くのライオン像のうちでも最も情けない表情だ。何ともユーモラス。

 ヴェネツィアは車が全く通らない、世界でも無二の都市。従って緊急時対応の場合も車ではなく船が活躍する。これは消防船。やっぱり赤い色なんだ。

 こちらは救急船。

 さらに警察の船。penitenziario とは刑務所のことだが、パトカー的な役割を果たすんだろうか。

 最後に、その警察の警官とゴンドリエーレとの歓談風景を。

 

 

 

 

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ヴェネツィアあちこち⑬ 喧噪の街から静寂の別世界へ。キオッジャからの帰途、幻想の落日を見つめた

2019-10-08 | イタリア・ヴェネツィア

 晴れた日の午後、キオッジャへの小旅行を思い立った。キオッジャは、ヴェネツィア本島の東に長く延びるリド島からラグーナを渡って南にある町だ。

 この小旅行の目的は、ラグーナの海上で眺める雄大な夕景。従って午後からの出発が程よい時間帯となる。

 ただ、行き方は少々面倒。まずヴァポレットで本島からリド島に渡る。その船着き場から少し先のエリザベッタ広場で11番バスに乗って島の南端まで進む。

 終点のマラモッコにはフェリーが待機しているのでこれにバスごと乗船。フェリーはペレストリーナ島に着く。ここで船を乗り換えてキオッジャへ、という行程になる。

 行きのラグーナは、午後の日差しを浴びてまさにキラキラと輝いている。

 キオッジャの港が見えてきた。

 キオッジャに到着。キオッジャもかつては独立した都市だった。ただ、1380年に隣接する大国ヴェネツィアの攻撃を受けて敗戦し、以来ヴェネツィアに従属する町になってしまった。

 ただ、近年は観光事業なども発展してきているという。船から降りた場所はヴィーゴ広場。そこから街並みが広がっている。

 サッカーグッズを売る店もあった。この地区にもサッカーチームがあるようだ。

 少し横道にそれると、広い道路なのに堂々と道を横断して洗濯物が翻っていた。何とものどか。左上に見える青い飾りのようなものは、その家に赤ちゃんが誕生したというお祝いの飾りだという。

 運河に面した街並みが、綺麗に水面に映っている。ヴェネツィア本島でもこうした風景をよく見かけるが、ここまでぶれもせずきれいに映り込むのはなかなか珍しい。

 サン・ドメニコ教会。1200年創設という歴史を持つ。

 中に迫力たっぷりのキリスト像があった。祭礼時はこの像が街を行進するそうだ。

 さあ、散歩しているうちに夕方が迫ってきた。帰りのフェリーニ乗ることにしよう。

 夕陽を映した海は、黄金色に輝く。この海面のうねり!

 ムール貝を養殖している場所だろうか。その施設のシルエットが効果的な陰影を創り出す。

 遠くに見える島影はどこだろうか。まるで宇宙のさなかに放り出されたかのような浮遊感に浸っている。

 太陽は絵のように丸く温かく、西の空に浮かんでいる。

 そして次第に水平線の彼方に向かって遠ざかってゆく。

 間もなく昼という時間は終わりを告げ、夜の領域へと移り行こうとしている。

 移動時間は約1時間。騒然としたヴェネツィア本島空間からほんの少し離れただけで、「静寂」に包まれた全くの別世界に浸ることの出来る貴重な場所が、そこにあった。

 

 

 

 

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ヴェネツィアあちこち⑫ マルゲリータ広場では地元の人たちの日常生活が展開されていた。

2019-09-24 | イタリア・ヴェネツィア

 マルゲリータ広場の外れにあるカルミネ教会に入った。

 壁面上部にはズラリと絵画が並ぶ。聖書の物語のようだ。

 たまたま窓から差し込む光が、まるで絵画の中の聖母から発せられたかのように光線を伸ばしていた。

 教会を出て広場に行く途中、結婚式を終えたばかりの新婚カップルとばったり。「アウグーリ!」と声を掛けたら、にっこり微笑んでくれた。

 この広場は本島でも1,2を争うくらいに広いうえ、観光客もあまり来ないところなので、地元の人たちがゆったりと時間を過ごす風景に出会える。

 おばあちゃんと孫とのおしゃべりの時間。

 犬を連れての散歩のおじいさんと買い物途中の老紳士。奥さんから言いつかった買い物の品が思い出せなくて家に携帯で連絡中?

 こちらは出店での野菜や果物のショッピング。

 赤ちゃんの散歩風景もよく見かける。

 もちろん観光客がゼロというわけだはない。時折ぞろぞろと歩く団体さんの姿も見かける。

 この日は小学生の遠足(?)にも遭遇した。

 そうしたざわざわの周囲にも全く影響されず、ひたすらスマホに熱中していたお嬢さん。

 広場入り口に、しかめっ面の監視人がいた。

 隣にはもっと恐ろしい怪物の形相。

 かと思ったら、ほっとする笑顔もちゃんと用意されていた。

 

 

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ヴェネツィアあちこち⑪ サルーテ教会にはペストを追い出す聖母像が。個人的にはチーニ館の螺旋階段。

2019-09-21 | イタリア・ヴェネツィア

 ドルソドーロ地区で最も有名な建物は、やはりS・M・サルーテ教会だ。この教会の建立は1687年。その半世紀前にヴェネツィアを襲ったペストの猛威は、人口の3分の1が死亡するという大惨事となった。元老院はこのペストから街を救ってほしいと聖母マリアに願いをかけて、ようやく収まった後に感謝のしるしとしてこの聖堂建設となった。

 従って名前も「santa maria della salute」(聖母への感謝)の教会という名前になっている。

 

 主祭壇に掲げられているのは、もちろん聖母像。ビザンチン様式の絵画だ。

 その上部には3体の彫像が並ぶ。中央に聖母がおり、右側には老婆として表現された「ペスト」が逃げ出そうとする姿。左側は聖母に寄り添うヴェネツィアの寓意像だ。

 下壇もまた見逃せない。華やかな絵画が展開されている。

 他にもキリストの神殿奉献図など様々な絵画、彫像があるが、以前紹介しているのでこの辺に留めることにしよう。

 あと1つだけ。床面の模様、デザインもすばらしい。

 そんな堂内を、まるで放心したようにじっと見つめている少女がいた。

 この教会からアカデミア美術館側に少し戻った場所にチーニ館という建物がある。裕福な実業家ヴィットリオ・チーニによって収集された宗教美術コレクションを展示する館だ。

 中央にドッロ・ドッシの作品「アッレゴーネ」。女性の喧嘩?

 象牙の彫刻。小さいが細工を凝らした作品だ。

 聖母子像。背後の男性像が何やら不気味だ。

 中世の聖母子像。解説がなかったので詳細は分からないが、それぞれに素朴さを備えた秀作だ。

 個人的にはここの螺旋階段がとても気に入った。

 日暮れ時、運河を渡るゴンドラがシルエットとなって、時が止まったような気分に包まれた。

 

 

 

 

 

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