新イタリアの誘惑

ヨーロッパ・イタリアを中心とした芸術、風景。時々日本。

心ふるえる風景 パリ編㉖ テルトル広場周辺は どちらを向いても絵画の匂いに満ち溢れている

2024-09-28 | 心ふるえる風景 パリ編

 朝早く出発したので モンマルトルの丘に到着してもまだ開店前の店が多い

 その中で観光客を目当てに早々に店を開けたのが 絵画のポスターなどの土産物店だった

 若い女店員がさっそうと 店の前に土台となる木枠を据えて 

 そこに絵画作品を 次々と並べていく

 

 作品はロートレック モネ ルノワールなど 

 まさにモンマルトルで成長していった作家の 作品を中心に幅広い

 陽光を浴びたその場所がカラフルで まるで花畑のように眩しい

 

 そういえばこの店のすぐ後方にある カフェ「LE CONSOLATE」には

 ロートレックらが集まって 芸術論議を闘わせた場所だし

 少し西に行けばピカソ マティス モディリアーニらが暮らした

 スタジオ「洗濯船」があった所に 行き当たる

 

 「洗濯船」と呼ばれた古いビルは 灯かりも暖房もなく

 強風の夜には古びた梁や板が ギーギーときしんだ

 それはまるでセーヌ川に浮かぶ洗濯場が 波に揺れているようだと名付けられた名前だ

 そんなボロアパートから 若き画家たちは世界へ飛び出していった

 

 似顔絵描きたちの営業場所である テルトル広場からもすぐ近く

 この周辺はどちらを向いても 絵画の近現代化を形成してきた一つの中心地

 それだけに絵の土産物店の オープン一番乗りは

 モンマルトルにふさわしい姿だなあ と妙に感心した光景だった

 

 

 

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心ふるえる風景 パリ編㉕ モンマルトルの急階段で 少女と一瞬の会話!?

2024-09-24 | 心ふるえる風景 パリ編

 「長い坂道と急な石の階段」

 モンマルトルを地形から言い表せば この表現が一番ふさわしい気がする

 どこに向かうにも 角度のつかない道はほとんどなく

 階段を上下せずに目的地につくことは 相当難しい

 

 朝元気一杯で出発したのだが 頂上のサクレクール聖堂に到着する前に

 もう 少し足がだるくなってしまった

 くねくね曲がる細い道も あちこちに点在し

 地図を確認しないと すぐに迷いそうになってしまう

 それで1つの長い階段を上り切ると ついそこで一息ついて

 上ってきた階段の下を眺めながら 小休止することになる

 そんなある時 いつものように下を向くと

 地元の小学生らしい少女が 階段の途中で手を上げて話しかけてきた

 多分「ジャポネーゼ?」 と言っているようだ

 フランス語の知識はゼロなので「シー シー」と答えると

 「フジサン(富士山)!」 と大きな声と笑顔で返してくれた

 学校で習ったのだろうか それとも家族で日本旅行をしたことがあるのだろうか

 

 いずれにしても思いがけない場所で 思いがけない”会話”が成立したことで 

 階段上りの疲れが 一瞬で吹き飛んだような気分にさせてくれた「事件」だった

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心ふるえる風景 パリ編㉔  風車が思い出させる パリ大改造とモンマルトルの歴史

2024-09-21 | 心ふるえる風景 パリ編

 モンマルトルの丘の西側に ムーラン・ド・ギャレトの風車がある

 ここは19世紀後半にオープンした ダンスホールのついた酒場だ

 この場で思い出されるのは 印象派の画家ルノアールの代表作

 「ムーラン・ド・ギャレットの舞踏会」

 

 柔らかな日差しの降り注ぐ 広場に集う庶民たちが 

 楽し気にダンスに興じる 幸せの風景だ

 

 ルノワールはこの酒場の姿に魅せられ 近くにアトリエを借りて毎日ここに通った

 外光の明るい昼下がりと 透き通る陰影との対比を意識しながら

 酒とダンスに心も弾む人たちの 表情を見事に描き切った

 モンマルトルは パリの中心部から離れた田舎の地だった

 なのにこんな豊かな集いが なぜ出現したのだろうか

 それには時代の背景が 大きくかかわっている

 

 当時ナポレオン3世による パリ大改造計画が進んでいた

 パリ中心部を再開発して 全く新しいパリを造ろうというもの

 最も影響を受けたのは 開発の支障となる貧しい労働者たちだった

 

 中心部に住んでいた彼らは 未開発のモンマルトル周辺に追われた

 また貧しかった若き芸術家たちも 同様に中心部から排除された

 

 その結果庶民たちの ささやかながら大らかな楽しみの場と

 光を描くことに目覚めた若き画家たちの テーマとが奇しくも合致して

 名作が生まれ モンマルトルが新しい名所となって行った

 

 こうした歴史を思い出させてくれるのが モンマルトルの風車でもある

 

 

 

 

  

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心ふるえる風景 パリ編㉓ モンマルトルの入口に 女流画家の名前を冠した広場があった

2024-09-17 | 心ふるえる風景 パリ編

 サクレクール聖堂へ行こうと 地下鉄アベス駅に着いた

 ここからはケーブルカーが出ており 一気にモンマルトルの坂の上に行ける

 駅からケーブルカー乗り場までは ほんの数分の距離だ

 

 朝早くだったので 通路に出ると通学途中の小学生たちに出会った

 彼らは思い思いに話しかけたり 中には歌を口ずさんだりと楽し気に歩いて行く

 目的の学校は すぐ先の広場に面した場所にあった

 広場に掲げられた標識を何気なく見たところ こんな文字が書かれていた

 「シュザンヌ バラドン広場」 この名前どこかで聞いたことがある

 そう 19世紀に活躍した女流画家の名前だ

 彼女はまだほぼ男性独占の時代だった フランスパリ画壇の中で

 ルノワールらのモデルを務めながら 独学で絵を習得し始め

 たくましく女性画家の道を 切り開いた先駆者だ

 それにモンマルトル風景を描いて名作を残した ユトリロの母でもあった

 決して世界的に 有名だったとは言えないものの 

 力強い人物描写で自由な画風が 個人的には好きな画家

 

 モンマルトルではもっと有名な ルノワールでもロートレックでもなく

 女性の先駆者の名前を冠した場所で 成長する子供たちの中からは

 また新しいパイオニアが 誕生するのではと 

 夢膨らむ思いが 湧きあがった朝だった

 

 

 

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心ふるえる風景 パリ編㉒ モンマルトルの旅のスタートを「赤い風車」が出迎えてくれた  でもあの風車の羽根が落下!!!

2024-09-14 | 心ふるえる風景 パリ編

 何度目かのパリ訪問の際 モンマルトルを中心に歩こうと決めていた

 それで丘の登り口に当たる ブランシェ駅近くのホテルをネット予約した

 

 ドゴール空港から高速バスでオペラ座前まで行き そこから地下鉄でブランシェ駅に到着

 地下道から階段を上って地上に出た時 最初に目に入ったのが赤い風車だった

 日没を過ぎ暗い夜空にくっきりと浮かび上がる 「ムーランルージュ」

 

 19世紀末に誕生し 華やかなパリの夜の象徴的な存在として人気を博した劇場

 そこを舞台に描いたポスターで 世界に名を知られた画家ロートレック

 彼の絵を通じてもなじみ深い姿が 目の前にドンと立ち上がった

 

 まさにモンマルトルへの旅が おあつらえ向きの光景と共に始まった

 それにしても 4本の風車の羽根が鮮やか過ぎて 

 夜の街なのに まるで陽が差すかのような明るさ

 旅の心を ワクワクさせずにはおかないシーンだった

 

 ところでこの風車に関しては 最近びっくりするようなニュースが伝わった

 今年4月この羽根が外れて落下 そのうえ看板「MOULIN ROUGE」のうち

 「MOU」の文字が外れてしまったという

 その後修復され オリンピック前には元に戻ったとのことだが

 やっぱり羽根のない風車じゃ 絵になりませんからねえ  

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