前回の旧博物館動物園駅のちょうど交差点向かいに、黒田記念館がある。この建物は日本の近代洋画界をけん引した黒田清輝を記念した建物だ。
黒田清輝は、1866年生まれ、17歳でパリに留学した。当初の留学目的は法学を学ぶため。だが、パリの自由な空気の中で絵画に目覚め、印象派的な視覚で物事をとらえる外光派と呼ばれる画風を吸収して9年後に帰国。自らが進歩的な絵画作品を発表する傍ら、東京美術学校の教授となって明治の洋画界を大きく進展させた功労者だ。
彼の遺産の一部を活用して、この黒田記念館が建てられた。設計は同校教授だった岡田信一郎。
正面から見ると、2階部分にイオニア式柱頭が並び、外壁にスクラッチタイルと呼ばれるタイルが貼られている。大正期にはコンクリートや鉄が構造に使われるようになり、レンガ積みではなく、このようにタイル貼りで外装を仕上げることが可能になった。
それも手作業で櫛目をつけるスクラッチタイルで変化を演出する工法が出現した。この工法はフランク・ロイド・ライトが帝国ホテルで使用したものだ。
また、玄関口の扉窓は、アールヌーヴォー風のデザインを採用している。
内部の階段も美しい。手すり部分の装飾にしゃれた工夫がなされており、
赤じゅうたんと下階の板階段とのコントラストも面白い。
次回は黒田の絵画作品をじっくり観賞しよう。