翌朝、早起きしてホテル近くを散歩した。まだ夜明け前、月は見事に半分だけの半月形。
通りが少しずつ明るくなってきた。
丘陵側に出てみた。と、こちらは濃い靄に包まれている。一面に薄墨を撒いたかのような状態。
昨日眺めた緑の風景とは一転して幻想的な・・・。
靄が動いて雲になり、丘陵を覆い尽くす。一瞬雪舟の絵を連想しそうな色合いだ。
しばらくすると、靄が少しずつ薄れてきた。山の形が見え始める。
そうこうするうちに、朝日の色が微かに混じり始めた。
この地にも朝が確実に忍び寄る。
陽の光が地上に差し込み、今日の始まりを告げる。
さあ、ぼちぼち次の街へ旅立つ準備を始めよう。
と、こんな看板を発見した。ポリツィアーノの生家を示す看板だ。
ポリツィアーノとは、あの栄華を誇ったフィレンツェ・メディチ家の当主ロレンツォ・イル・マニフィコの親友で、華麗な詩を数多く紡ぎ出し、ボッティチェリを始めとした多くの芸術家たちに多大な影響を与えたルネサンスの大詩人。 そんな偉人がこの町の出身だったとは知らなかった。
モンテプルチャーノ滞在の最終日にルネッサンスの重要人物のルーツに出会うという、思いもかけない体験をしてしまった。
そんな思い出を胸に、モンテプルチャーノからまた別の街へと旅は続いた。