新イタリアの誘惑

ヨーロッパ・イタリアを中心とした芸術、風景。時々日本。

上野歴史散歩⑭ 旧寛永寺五重塔は、江戸時代江戸に建立された5つの五重塔のうち、現存する最も高い塔

2022-09-30 | 上野歴史散歩

 上野公園内で一番高くそびえる建築物は、旧寛永寺五重塔だ。佐倉藩主土井利勝が寄進し1631年に建設された。土井は2代将軍徳川秀忠の小姓となって昇進、後に3代将軍家光の代に大老にまで出世した人物。

 

  最初の塔は8年後に焼失してしまったが、土井は改めて再建を志し、1639年に復元させている。高さは36・36mだ。

 当初は東照宮の参道側から塔に近づこうと思ったが、柵があって近づくことが出来なかった。後日、上野動物園に入ったら、五重塔はすっぽり動物園の敷地内にあってびっくりした。

 つまり、国の重要文化財である歴史的建築物が実は動物園の中にあるという、激レアなロケーションなのだ。

 4層までは瓦葺きだが、5層目だけは銅板葺きになっている。見上げれば雄大な姿だが、周囲からは動物たちの鳴き声が聞こえたり、観光客たちの話し声が交差したりと、実に不思議な感覚に襲われる空間だ。

 江戸時代、江戸には5つの五重塔が建立された。建設順に池上本門寺(1608年)、寛永寺(1631年)、芝増上寺(1631年)、浅草寺(1648年)、谷中天王寺(1791年)。

それぞれの経緯をたどってみると、

 池上本門寺は江戸最初の五重塔であるとともに、現在もその塔が残っている東京最古の塔になっている。高さは29mで、東京に現存する江戸期最高の五重塔は旧寛永寺五重塔ということになる。

 浅草寺は942年に三重塔として建立され、1648年に五重塔となったが、1945年の東京大空襲で焼失、1973年に現在の姿に再建された。いかにも歴史を経ていそうな外見だが、実はかなり新しい塔で構造は鉄筋コンクリートという現代の塔だ。

 谷中天王寺は1772年に焼失し、再建されて戦後まで存在していたが、1967年、不倫関係清算を図った放火心中に巻き込まれて焼失してしまった。幸田露伴の小説「五重塔」はこの事件を題材として描かれている。

 また、芝増上寺も1806年の焼失後一度は再建されたが、これも東京大空襲で焼失し失われたままになっている。

 

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上野歴史散歩⑬ 日本の大将碑とアメリカ将軍碑が並んで建ち、江戸から続く時の鐘を聴く空間がある

2022-09-27 | 上野歴史散歩

 2つの神社横には上野精養軒がある。ここは1876年、上野公園がスタートした時に開園レセプション会場として使用するためにオープンした歴史ある店。

 そのすぐ脇には「時の鐘」が見える。江戸時代、市民に時間を知らせるための装置として幕府が1666年に設置したもので、上野だけでなく日本橋、浅草、目白不動など9か所で時を知らせた。時計のない時代の江戸っ子の生活の指標として役立ってきた。当初は2時間ごとに鐘がつかれたという。

 実は今でもこの鐘は生きている。精養軒で昼食を摂った時にウエイトレスさんに聞くと、毎日朝6時、12時、夕方6時の3回鳴らされるという。

 この鐘にちなんだ一句。 「花の雲 鐘は上野か 浅草か」(芭蕉)

 すぐ近くに建つ像は小松宮彰仁親王碑。陸軍大将から日本赤十字社初代総裁として赤十字活動の発展に尽くした人物だ。日本赤十字社設立25周年を記念して1912年に建てられた。

 ただし、像は陸軍大将としての姿で制作されている。

 その横にもう1つの碑がある。グラント将軍植樹碑。

 グラント将軍はアメリカの南北戦争で北軍を勝利に導いた司令官。その後合衆国大統領を務めた。来日したのは大統領を辞任した後の1879年。この時公園で催された歓迎会に出席し、ヒノキを植樹した。

 そのヒノキが向かって右側の高い木だ。記念碑は渋沢栄一らによって建てられた。

 日本の大将とアメリカの将軍の碑が同じ場所に建てられ、そろって江戸時代から続く鐘の音を聞いているなんて、いかにも上野公園らしい面白い一画になっている。

 

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上野歴史散歩⑫花園稲荷神社と五条天神社。かつて上野戦争の戦場だった場所には今、2つの神社が建つ

2022-09-24 | 上野歴史散歩

 上野大仏の裏手に2つの神社が建っている。花園稲荷神社は、赤い鳥居が多数並ぶ道を進む。

 階段を経由してさらに下ってゆく。

 この鳥居のドームは神秘性を伴って続き、ちょっと神域に迷い込むような感覚を味合わせてくれる。

 すると、お稲荷さんが小さな子連れで出迎えてくれた。

 忍岡稲荷神社、または穴稲荷などと呼ばれることもあり、商売繁盛や縁結びなどにご利益があるとされている。

 そして、すぐ隣には大きな石の鳥居を持つ五条天神社がある。

 こちらは2柱の薬師神を祀っており、健康祈願の場所となっている。

 ウイークデイの昼下がりだったせいもあり、とても静かな空間となっている。

 だが、上野戦争時にはこの付近で激しい戦いが繰り広げられ、多数の死傷者が出た場所となっていた。

 

 

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上野歴史散歩⑪ 上野で大仏に遭遇!幾多の災難の末に、今は「顔だけ」で受験生の守り神に。

2022-09-20 | 上野歴史散歩

 上野にも大仏様がいる!

 といっても奈良や鎌倉のような巨大なものがあるわけではない。あるのは、顔だけ。

 上野精養軒前の小さな丘の上にひっそりと安置されている。この大仏も以前紹介したように、京都に関係している。天海僧正の「上野の京都化構想」によって、京都東山にあった方広寺の大仏を模して製作されたものだ。

 1631年の完成時には高さ6mの釈迦如来像がそびえていた。だが、1647年の地震によって倒壊し、さらに再建後も1841年の火災、1855年の安政大地震など何度も災害に見舞われた。近年では関東大震災で倒壊、この時バラバラになった顔と胴体は、別々のままにされていた。

 さらに災難は続く。第二次世界大戦の最中、物資不足の政府は胴体部分を金属供出として接収。顔だけが残されることになった。

 その顔部分が今の形となって修復されたのは、ようやく1972年になってからだった。壁面にしっかりと固定され、屋根も付けられてようやく安住の形となった。

 これによって、地震などで何度も地面に転がり落ちた顔が「もう絶対に落ちない」として、今は受験生の合格の守り神ともなっているそうだ。

 このように幾多の災難に見舞われた大仏だが、唇の部分を見るとちょっと赤くなっている。江戸時代に彩色された朱色がまだ残っているという奇跡を、肉眼で確かめることが出来る。

 「顔」の横には仏塔(パゴダ)が建っている。

 なお、手本となった京都方広寺の大仏も地震で倒壊して今は残っていない。

 大仏様の小高い丘を降りると、目の前にトーテムポールが出現する。ライオンズクラブが寄進したもので、結構高い。

 よく見ると、かなり怪奇的なデザインだ。友人と二人で動物の当てっこをした結果、下から順に像、ワニ、ライオン、サル、架空の怪物、キリン、フクロウなどがデザインされているという、私的な結論となった。

 

 

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上野歴史散歩⑩ 不忍池の裏側にはしゃれた洋館・三菱財閥岩崎家の本宅が今も残る。災害時には住民に避難所として開放されたことも。

2022-09-17 | 上野歴史散歩

 不忍池の淵を回って行くと、旧岩崎邸庭園にたどり着く。この建物は三菱財閥岩崎家本邸として1896年に完成した。設計者は日本の西欧建築の父とも称されるイギリス人建築家ジョサイア・コンドル。完成当時は1万5千坪という広大な敷地に20棟以上の建築が並んでいたが、現在は3棟だけが残っている。

 中心となる洋館は、本格的なヨーロッパ式邸宅。17世紀のイギリスで流行した、重厚なジャコビアン様式の装飾が施されている。

 裏側に回ると、開放的なベランダに行き着く。列柱の間から見晴らす庭園が心地よい。

 ふんだんにスペースを取ったベランダで、ここで日光浴でもしながら日がな一日時間をつぶしてみたい、といった気持ちが沸き上がった。

 どこか懐かしい感じがしたが、それは数年前に訪れた長崎のグラバー邸のベランダとも似ていることを思い出した。手すりにはイスラム風のデザインがあしらわれている。

 内部の階段もいい感じ。装飾が各所にあしらわれている。

 庭に降りて建物を眺める。見上げれば一層しゃれた感じが強調される。

この建物は、1923年の関東大震災時には、付近の住民の避難所として開放されたというエピソードも残っている。。

 明治期の洋館の中でも異色なのは、別棟として建てられた撞球室。つまりビリヤード場で、本館とは全く様相を変えて、まるでスイスの山腹で見かける山小屋のような風情。

 ちゃんとしたビリヤード台も残っていた。

 帰りがけに、玄関右側にある石塀に紋章が刻まれているのを見つけた。遠くから撮ったのでちょっとわかりにくいが、中央の丸い出っ張りの中に三菱の社章の基となった岩崎家の家紋「重ね三階菱」の意匠が刻まれていた。

 

 

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