彫刻の巨匠ロダンが晩年住まいとしていた邸宅が、今は美術館となっている。彼自身がこの建物を美術館とするよう計画したもので、ロダンの初期からの主要作品が一堂に会している。
そうした作品群をつなぐ階段が美しい。
白壁を背景として、黒々とした手すりが浮かび上がる印象的な設定に配置されている。
壁面にも彫刻作品が飾られており、自然な流れの中で、階段を歩きながらの作品鑑賞も出来てしまう。
ここには一時愛人関係にあったカミーユ・クローデルの作品も展示されていて、かつてロダンとカミーユの物語を取材するために何回もこの階段を上り下りしたことがあった。
ここでは広い庭園にも作品が展示されている。この「カレーの市民」も見逃せない傑作だ。(同じ作品は上野の国立西洋美術館にもあるので、ご存知の方も多いはず)
そうした作品をスケッチする若い女性たちの姿もあった。美術学校の生徒たちだった。
ロダンとカミーユの作品の中で、個人的に好きなものを1点ずつ紹介しよう。
まずは、ロダンの「大聖堂」。2つの手が合わさろうとしている。よく見ると。これは両方とも右手であることがわかる。つまり、2人の人間の手が組み合わさろうとしている、祈りの形だ。
カミーユの作品「ワルツ」。タイトル通りワルツを踊る2人だが、女性の体は今にも崩れ落ちそうに傾いている。不安定な心の状態が全身で表現された作品だ。
カミーユは愛したロダンの曖昧な態度に心を病み、数十年もの精神病院生活の後一人寂しくこの世から去って行った。