回顧と展望

思いついたことや趣味の写真などを備忘録風に

林檎の花

2020年05月22日 08時34分25秒 | 日記

林檎の花が今年も咲き始めた。蕾の時は先端がわずかに赤みを帯びているのだが開くとほぼ純白になる。花の期間は短く満開になるとすぐに桜の花びらのように散ってしまう。

林檎は人間にとって最も歴史がある果物といってもいい。聖書では禁断の果実としてアダムとイブが楽園を追われたのにもこの林檎がかかわっているくらいだから、創世記から存在したことになる。時代が下って、弓の名手として、あるいは父子の信頼の象徴として、ウイリアム・テルによる息子の頭上の林檎を射抜く伝説は有名だし、近代物理学の基礎を築いた知の巨人アイザック・ニュートンは林檎が木から落ちることから万有引力の法則のヒントを受けたという逸話もある。さらに、ビートルズのレコードレーベルは一時期アップルだったし、現在では、世界の株式時価総額の首位を争うIT企業の社名であり、スマートフォンに至っては、特に日本ではそのシェアが5割を超えるという、すなわち日本のスマートフォンの半数が林檎の形をロゴにしている。また、ビッグアップル、といえばニューヨークのことだ。

林檎は持ち運びが楽なうえに栄養もあり美味、皮も残さず食べられる(種はさすがに食べられないが)し果汁が漏れる心配ない。1980年代初め不況下のイギリスにいた時には多くの英国人社員は昼食にラップで包んだサンドイッチ一切れに林檎を一つ持ってきていた。質素というのか合理的というのか、あるいは節約せざるを得なかったのかそのいずれかだろうが、時々それにポテトチップスが一袋ついていた。ひげ面の大柄な男から、金髪のまだ頬が林檎のように赤い少女のような社員まで、それぞれがイギリスで一般的だった青い林檎をかじっている光景は、すっかり豊かになった今ではもう見られないだろう。

林檎は比較的寒冷地で栽培されていて北海道も主要な産地だ。ただ、「津軽のふるさと」では、「りんごのふるさとは北国の果て」とうたわれる。津軽が北国の果て、と言われてしまうと一体北海道はどうなってしまうのか、とも思うが・・。今年の北海道はいささか天候不順というかこの時期になってもまだ肌寒い日がたまにある。

そうかといえば、林檎の花が旅を渇望させる暖かさの象徴として歌われたものもある。

何処かに行きたい、林檎の花が咲いてる暖かい処なら、何処へでも行く (村下孝蔵 踊り子)

そろそろ散り始めた庭の林檎の花

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする