今日は支笏湖へ。まったく人気のない湖は、鏡のような水面にただ山と雲を映すのみ。太古からの自然に戻ったようだ。
今から半世紀近く前、当時大学がここのほとりに寮を持っていて、学生が利用することができた。その夏、友人たちと総勢20人程度で二泊三日の旅行をしたことがある。その時の写真は今でも持っているのだがそのうち、3人はすでにこの世にいない。二人は去年から今年にかけて半年の間に相次いで世を去った。友人を思い出すとき、寂しさの募る場所だ。この湖は観光地としては決してメジャーではないがその静けさと雄大な景観は実に魅力的。
渡辺淳一の小説「無影燈」(TVシリーズでは「白い影」)で末期の癌で死にゆく主人公の直江が訪れ、失踪するのはこの湖。支笏からの音の連想で死骨という俗説があるが、確かに安楽な気持ちにさせてくれるところがある。しかし、今日はそんな厭世的なものではなく、これからも生きていく人間として訪れたつもりだ。これほど鮮やかに、きれいに湖面に映る空や雲を見たことはない。