家の前の公園に植えてあるノリウツギが満開になった。ガクアジサイによく似ている(アジサイ科アジサイ目なので当然と言えば当然)。その花に引き寄せられて蜂たちが群がっている。歩道に沿って何本も植えてあるこの木のそばを毎日のように散歩で通るのだが、今日のような曇りの日には白い花がむしろ生き生きとして見える。
この花の北海道での別名は「サビタ」。北海道出身で、生涯をその地で過ごした原田康子の小説『サビタの記憶』(1954年)で一躍有名になったこの白い花は北国の夏の風景によく似合う。この小説は昭和20年代、まだ20代の清新な感受性にあふれた原田の傑作短編のひとつと言えるだろう。小説にも書かれているようにその香りは本当に微かだ。公園の管理者が毎年秋には短く刈り込むのだが、いつもしっかりと花をつける。ただ、この枝はひ弱で雪の重みに耐えきれないから、冬越しのために一本ごとに繩巻に。根気のいる作業が毎年繰り返されてやっと生き延びている。