今日、たまたまフリックコレクションのHPを見ていたらホルバイン(子)の描いたトマス・モアの肖像画についての学芸員による説明があった。ハンス・ホルバインはバーゼルとロンドンで活躍した肖像画の巨匠。バーゼルではデジデリウス・エラスムスの肖像画を描き、エラスムスの紹介でロンドンにいたトマス・モアの下に赴き彼の肖像画を描いた。
「ユートピア」で有名なトマス・モアは思想家・法律家であり、神学者・哲学者・宗教家としてのエラスムスとは生涯の親友だった。周知のとおりトマス・モアは後日、カトリックの宗教家としての立場からヘンリー8世の離婚に反対したことから、トマス・クロムウエルが主導する査問委員会にかけられ、反逆罪によりロンドン塔に幽閉、結局斬首される。ホルバインは、しかし、ヘンリー8世の肖像画も描いている(ただし原画は1698年に火事で焼失した)。
友人とは何か。エラスムスが、トマス・モアに宛てた手紙には、
Life without a friend, I think is no life, but rather death.
とある。友人のいない人生なんて死んだようなもの、というような友人は果たして自分にはいるだろうか。
ホルバインの描いたトマス・モアの肖像画。