回顧と展望

思いついたことや趣味の写真などを備忘録風に

TV映り

2020年07月25日 14時52分02秒 | 日記

コロナウイルス感染拡大防止のために世界的に在宅勤務やリモート営業が増え、Zoomなどを利用したTV会議やTV 通信が一層一般化しつつあるなかで、新たな問題が浮上していると、英紙インデペンデントが伝えている。イギリスの労働法関係の専門会社が調査したところ、3分の一以上の女性社員がTV 会議に出席するにあたって「入念に化粧をすることや髪形を整えること」を要求され、27%が「よりセクシーか挑発的な服を着ること」を要求された、と。

こういう要求をした理由について、41%の上司が「新たな商売を獲得するの役立つから」、40%の雇用者は「チームとして仕事をするのに綺麗に見えるのは重要だ」、33%が「お客を喜ばせるために必要だから」と答えている、という。

これに対して女性は40%が「男性は以前のままであるのに対して女性を対象にした差別だと感じる」、一方で25%が「将来の昇進に悪影響があるのではと恐れて、化粧により多くの時間を割くようになった」、そして60%の女性が「人事部に報告することを躊躇っている」、と。

この調査結果を踏まえ、セクシャルハラスメント防止や、職場での男女平等を要求している団体からは、コロナ危機に便乗した悪質・露骨な差別であり直ちにやめさせなければならない、という意見が出されている。さらに、今までセクシャルハラスメント防止や差別撤廃の研修をしてきたにもかかわらずこういうことが起きているのは、結局は男性の上司は口先だけでその本質は何ら変わっていないことの証左、と言うものまである。

この調査結果に対してイギリスでの反応は様々だ。男女双方から、とんでもない話であり、こういうことだからもっと規制や教育を徹底しなければならない、あるいはそんな要求があったら公にしてやればよい、というものがある。一方、セクシーという性的なアピールを求めるのは論外であるが、そもそもそんな上司が今時これほどいるとは考えられない、とか、さらに、何かあるとすぐに女性差別に結び付けているのではないか、男性にも当然ながら何を着るか(まさかだらしない格好でTV 会議に出ることは許されないはず)、顔や髪を整えるというのは同じであり、外見を整えるように言われるのは必ずしも性差別ではない、など。

たしかに、実際に会っているわけではないから、画面での印象がより重要になる。すなわち、どう見えるか、と言うのは今以上に重要になるだろう。よく見られたい、と言う自然な思いがある一方で、それを他人に強制されたり、ましてやそれを売り物にすることや、勤務評定に結び付けれれるというのは納得できない、と言うことは当然だ。この問題は決して簡単ではない。そもそも、在宅勤務と言うのは個人の私的な空間と仕事と言う公的な活動が交差するものでもあり、今までと同じ発想で良いのかということがある。女性の場合、在宅勤務では、人によって家事や育児といった職場にはない使命が同時に課されていることもある。そういったことは、会社が「TVで魅力的に見える」ことを要求することの是非を判断する時に十分考慮されなければならない。

また、業務の内容にもよるだろう。消費者が商品の購入を決定する場合、その商品の性能によるものであれば、相手がどのように見えるかは関係ないだろうが、商品に大きな差がない場合、相手にどのような印象を与えるか、信頼感や清潔感と言ったものが重要になることもある。

この、TV映りをどうするのかは、男女平等や女性の権利保護といった観点から今後 さまざまな見方や考え方が出てくるだろう。これらの問題ではアメリカが常に先鋭的だと思う。自分もアメリカの現地法人の責任者を5年ほど務めたが、この問題は常に頭の中に置いておかなければならなかった。形式上、組織の責任者として何度か訴えられ、それらはすべて根拠のないものだったが、一つ間違えばどのような結果になるかわからないという不気味なものだった。アメリカは訴訟社会だからすぐ弁護士が出てくる。そうなったらいわゆる「チキンゲーム」。どちらか弱気になったものが負ける。確かなことはこの問題では自分一人で解決しようと思わないことだった。自分になんら後ろめたいことがない以上、組織が対応する。人事部にはハラスメントや差別の問題を扱う専門の人がいて、その人にまかせることだった。形式上責任者が訴訟の相手にされて、自分宛てに召喚状がくるのだが、何度か裁判所の入り口までもつれた。まさに薄氷を踏むような5年間だった。

今の時代、立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花 などと簡単に言ってはいけないのだろうが百合の花には罪はない。

 

 

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