庭の片隅に植えてあったラベンダーは、年ごとに少しづつ増えてきて、今ではこの時期にそれなりの存在感を持つようになった。日本で植えられているラベンダーはイングリッシュラベンダー系で寒さに強く独特の色と香りで人気が高い。気候的に高温多湿に弱いので、夏でも冷涼な北海道が主要な生産地なのはうなずける。小さな花が咲いている期間は短く、終わってしまうと色が褪せてしまい寂し気な姿を晒す。満開の今は香りに誘われて蜂が気ぜわしく飛び回って蜜を吸っている。
ラベンダーと言えば北海道の富良野を連想するが、もともとはフランスから輸入されたもの。60年ほど前までは日本では知る人もなかった。せいぜいフランスに縁のある人がその香りに接した事があると言う程度だったのが、鉄道会社のPRに起用されたことがきっかけで今や日本では誰もが知る植物となった。梅雨のない北海道で、この時期ラベンダーの花と香りを楽しめるというのでラベンダー畑は今や一大観光地になっている。
この花は古くからヨーロッパでは薬用あるいは香料として珍重されてきた。いまでもフランス、プロバンス地方では盛んに栽培されている(もっとも、ラベンダーから製造される揮発性の油には健康上の懸念があり、規制されているところもあるが)。観賞用として色と香りが日本人の趣味に合ったのか、今では庭に植えてある家も多いし、時には道路沿いのか街路樹に代えて植えられているのを見ることもできる、北海道ではとても一般的な花だ。
日中は暑くなっても夜になると気温が下がり肌寒ささえ覚える北海道にはこの小さな花の色とさわやかな香りが良く似合う。そして、この香りには、抗鬱効果もあるというから、自宅にとどまることを余儀なくされている昨今、ふさぎ込んだりしないためにはこの香りをかいでみるのもいいかもしれない。