回顧と展望

思いついたことや趣味の写真などを備忘録風に

森伊蔵

2020年10月21日 19時42分27秒 | 日記

コロナ感染拡大によって今、国際航空路線はほぼ完全に停止状態にある。海外の航空会社は勿論のこと、日本の航空会社もかつてない苦境に立たされている。報道されているところによれば、全日空は人員削減、給与削減、大型航空機の半減など、当面旅客需要は回復しないとみて大胆な縮小の方向に舵を切っている。

一方のJALは、今朝のNHKニュースに登場した社長によれば、新規事業の開拓や、客室乗務員が一時的に日本各地の観光需要の掘り起こしのために地方に出向くことなどで、人員削減をせずにこの危機を乗り切る覚悟だという。

JALはかつて会社更生法の適用を受け、会社はどん底まで叩き落された経験があるから、その後の企業再建の過程で人員の確保に苦労したことがあるのだろう。いずれにしても、両社の方向は大きく異なっている。はたして、今後数年間、どちらの戦略が当たるのか、注目したいところだ。

自分はこれまで、駐在地と日本との往復や出張など、航空会社との関係は深い方だと思う。ただ、日本の航空会社は日本との往復には使用するとしても、海外駐在時代には、例えばロンドン時代には欧州内など比較的近距離の移動が多く、日本の航空会社はあまり利用することがなかった。その時担当していた業務にもよるが、一番多かったのはBA(英国航空)とSAS(スカンジナビア航空)だった。

BAが多かったのは当然のことながらとにかくロンドンを発着する便が他社に比べて圧倒的に多く便利だったこと。なお、イギリスの常として、BAは食事がまずい(逆にエール・フランスは食事が美味しい、と)と言う話はあったが、そもそも飛行機のなかで、料理についてあれこれ言うこと自体あまり意味が無いように思う。限られたスペースだし、気圧など人間の体にとって厳しい環境だ。こういったところで美味を堪能しようと思っても限度がある。したがってBAの食事がまずいということにそれほどの不満を感じなかったこともある。

一方SASは、北欧4か国(デンマーク、スエ―デン、ノルウェイ、フィンランド)の仕事がかなり多かったことによる。SASを利用すれば、これらの国を効率よく回ることが出来た。とくに、これら4か国間の移動にはBAは利用できない。SASのサービスは機能的で機体も清潔であり、さすがに裕福な国民を満足させるだけのことはある(これら4か国の国民所得は世界最高水準)。

ニューヨーク駐在時代には、アメリカ国内を移動することは余りなく専ら日本との往来に日本の航空会社を利用した。その際は全日空とJALをほぼ半々利用した。これは両社を公平に利用しようという組織の方針だったので、自分の好みによるものではない。一方、帰国してから、日本発の出張の際には自分は原則としてJALを利用した。これは、ロンドン駐在時に異業種交流と銘打った勉強会に呼ばれていたことがあり、そこで知り合ったJALの方と親しくなったことによる。彼は家柄が良いというのではなく、非常に紳士的なかただったからだ。

飛行機会社は座席ごとの乗客の名前を把握しているし、頻繁に利用している客には個別に挨拶に来る。あるとき、ニューヨークから日本に移動したときにJALを利用した時のこと。当時ジャック・シラク フランス大統領が好んだということで有名になっていた「森伊蔵」と言う焼酎を、自分が簡単な手術で世話になった主治医のために少し前にJALに搭乗した時、機内で買って持って行ったことがあった。

それが何かの記録になっていたのか、離陸して間もなくスチュワーデスが席にやってきて、もし森伊蔵がご所望ならお分けすることが出来ます、とわざわざ言いに来た。自分は焼酎は飲まないし、その時は特に誰かに贈る当てもなかったのだが、せっかくのスチュワーデスの好意でもあり、それでは、と言うことで一本買ったことがある。日本に戻ってみると大変な人気でなかなか手に入らないのだ、と聞いた。

航空業界と言うのは一見華やかな印象を与えるが運送業と言う事業リスクの高い業種であり、今回のように誰も予想が出来なかったことであっという間に企業として致命傷にもなりかねない。JALには何人もの友人が今も働いており、前回の経営破綻を乗り越えたように、何とかこの危機を乗り切ってほしいと思う。

コメント (4)
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