回顧と展望

思いついたことや趣味の写真などを備忘録風に

ストーンヘンジ

2020年10月14日 14時52分50秒 | 日記

何事においても世界で一流でなければならない、と考えているイギリス人にとって(フランス人は異議を唱えるかもしれない)、古代七不思議の中に、イングランド中部,サルスベリ―近郊に鎮座するストーンヘンジが入っていないことは大いなる不満である。そうは言っても七不思議を勝手に変えることはできないから、イギリス人(の一部)はこれを太古世界第八番目の驚異と呼ばれるべきだ、と主張している。確かに自分の記憶をたどってみても、子供の頃にいわゆる世界七不思議のなかに古代巨石文化の遺跡としてストーンヘンジを加えたものを読んだ記憶がある。

と言うわけで、イギリスに赴任して間もなくの初冬、週末にストーンヘンジに行ってみた。ある程度予備知識はあったものの、何もない原っぱの真ん中からその姿がだんだん現れてくるのを見た時はさすがに興奮した。大きな石が円形に並んでいてそのうちの一部にはやはり巨岩が載せられてある。いったいこんな巨大な石をだれがいつ、どのようにして、何のために作ったのか、まったく想像もつかない。それらを裏付けるような何らの資料も残っていないからだ。

その日はもう冬の冷たい風が吹き抜け(この辺りはいつも風が強いらしい)て手が凍えるほどだった。しまいには霙のようなものも降り出してきた。1980年のはじめ、まだ、世界文化遺産にも登録もされておらずのんびりしていたころで、特に入場料などを払うこともなく、草原の中を突っ切る道路から、徒歩でトンネルを通ってこの巨石のすぐそばまで行けたと記憶している。

1960年代、天文学者G.S.ホーキング(有名な理論物理学者のスティーヴン・ホーキング博士とは別人)が、この遺跡が古代の天体観測用であり、設計の指導者は地中海人だった、と言う説を唱えている。この遺跡は紀元前2150年以前に最初に作られたとしているがいっぺんに建てられたものではなく、何度も改修がされ、完成したのが紀元前1250年ころといわれている。夏至の朝には太陽はヒールストーと呼ばれる石の付近から昇り、太陽の最初の光線は馬蹄形の配置の中にある遺跡の中央に直接当たることから、天文観測用、と言う説が生まれたのだが、ホーキングの説には疑義を唱えるものも少なくない。

この遺跡を管理しているEnglish HeritageのHP によれば今は入場料(20ポンドほど!)を払わなければならない。そして、遺跡保護と観光客の安全のため今はかつてほど近づくこともできないようだ。すっかり商業主義に毒されてしまったように思えるが、あの当時はまだ素朴そのものだった。たしかに、数年前にそばを走る道路を車で通りかかった時にはこの辺りは世界中からの観光客で溢れていた。ストーンヘンジが観光バスの集団に取り囲まれているのは何か気の毒なようにも思えた。

今でもバスツアーの予約を受け付けているようだが、海外からの観光客はコロナ騒動で完全に絶えてしまっただろう。そしてこの巨石の円形列柱も静けさを取り戻してすこしほっとしていることか。やはり無人の吹きさらしの草原の真ん中に沈黙して佇む巨人のようなストーンヘンジには「孤独」が似合うように思う。

1971年版の「Illustrated Guide to Britain」から全景

夏至の日の儀式

 

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