回顧と展望

思いついたことや趣味の写真などを備忘録風に

Milky Way

2020年10月12日 14時57分21秒 | 日記

こういうのを芋ずる式と言うのだろう。メトロポリタンオペラのことを続けて書いていたら、どういうわけか、2003年8月14日からほぼ一昼夜続いた北米大停電のことを思い出した。カナダからアメリカ東海岸の大部分、5000万人が影響を受けたこの大停電の時は、ニューヨークに駐在していた(オペラばかり観ていたわけではない)。この時の自分のオフィスの一つが、ニューヨークからハドソン川をはさんだニュージャージー側にありそこにいた時にこの停電に遭遇したのだ。

ニュージャージーも同様に停電となったのだが、 マンハッタンを綺麗に見渡せる、ハドソン川にむかったオフィスだったので、電気の無い、したがって明りの消えたマンハッタンをよく見渡すことが出来た。たまたまこのオフィスはデータ処理を専門に行うところだったのでこういう場合に備えて自家発電装置がありそれが停電と同時に稼働したため、仕事にも影響がなかった。大停電でなくても、局地的に停電が起きることがあったのと、データ処理は一瞬でも停止すると大きな問題が起きるためだ。

しかし、こういう自家発電装置を備えているところは少なく、ほとんどの事務所は空調もエレベーターも止まり、ろうそくの明かりが頼りと言うような、突然原始社会に放り投げられたされたような状態だった。

東部一帯が停電になるといったことは初めての経験。いつもはまばゆいばかりに輝いている摩天楼が星明りを背景にして黒い尖塔が連なるようなシルエットを浮かび上がらせているのはなかなか感動的ですらあった。街の明かりが全く無くなった暗黒の地上の上に、天の川が輝いているのがはっきりと見えた。空をまさに星の川が流れている。天の川はいつもこんな風なのに地上の灯りのために見えなくなっていたのだ。こんな天の川の姿を見たのはもう随分前に、国鉄の小海線沿い、清里の近くの人家もまばらなところに車を止めて空を見上げたときに観た時以来。

その夜は、停電への対応と、それに市内は交通機関が寸断されていたので安全のことを考えオフィスで過ごす事にした。そして停電の原因がわかり徐々に電気が通されてゆくのを同じくハドソン川越しに見守った。様々な機械、地下鉄、工場などは突然の停電で止まっているから、電気を改めて流すにあたってはそれらの安全を確認してからでなければならない。いきなり通電して地下鉄が暴走したり工場が火災を起こしたりしないためだ。そのために市街を細かく分割したうえで電気を通してゆく。死んだような街が息を吹き返すように、マンハッタンが電光掲示板のコマをひとつづつ点灯して光を取り戻していく光景は幻想的だった。

それにつれて頭上の天の川も見えなくなった。あの時マンハッタンを照らしていた星の光は何千光年の先からの長旅の末に到着したのだろうと思うと奇妙な感じだ。それだけの長い時間をかけて地球に到着したらそこは大停電の真っ最中だった、とは。その光が出たのは仮に5000年前だとするとその時はまだ人間はピラミッドを建設中だったのではないか・・・

停電のため徒歩で帰宅する人たち

(Wikipedia)

コメント (2)
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