回顧と展望

思いついたことや趣味の写真などを備忘録風に

浜菊

2020年10月22日 15時39分06秒 | 日記

8年ほど前、家の外壁を塗り替えた。その時、トタン屋根の葺き替えも考えたのだが、工事業者がまだしばらく大丈夫、と言う話だったので、葺き替えはせずに、塗り替えをする事にした。塗装業者は外壁の業者とは違うので改めて選ばなければならない。トタン屋根の塗り替えだけなので、近くの業者がよかろうと思い電話帳でみると創業30年と言う個人経営の塗装会社があった。早速電話をして見積もりを取ってみると外壁業者が紹介してくれた業者の見積もりよりもかなり安い。

塗り替えだけでもあり、地元でこれだけ長く仕事をしているのであれば不誠実なことはしないだろうと思いその業者にまかせることにした。見ていると社長自らが屋根に上って陣頭指揮をし、約束通りに下塗りのうえに2度塗装をするという丹念な作業だった。彼は傷んだ屋根や壁が、塗装によってまるで新しいもののように生き返るようになる、というのが仕事をする喜びだ、と言いつつ、工事の一部始終を記録した写真をアルバムにして置いていった。

多分10年くらいはこの塗装でもつと思いますが若干トタンが弱っていますね、ということだった。費用もさることながら、まだ問題がないのであれば葺き替えをするのは、と思ったので、塗装することにしたのだが一抹の不安が残らないでもなかった。塗装工事の最中、彼はこの家の庭を見て、ずいぶん沢山花や木を植えているんですね、ともらしていた。そして、工事が終わって代金を支払った後、その社長が家に挨拶に来て、仕事のお礼にと言って小さな浜菊の鉢植えを置いていった。この花は強い花だからいずれ大きくなりますよ、と言って。もうあまり場所もなかったので、鉢植えのままにしておいたらあまり大きくもならずかといって枯れることもなく3年ほど過ぎた。

確かに塗装自体は上手く行ったと思ったのだが、その年、強い台風が来て大雨になり、その直後から幾つか雨漏りがするようになった。たまたまそのころ、建物更生共済の書き換えの時期が来て担当者が家にやってきた。更新することにしていたら、その担当者が、何か家のことで不都合はありませんか、と訊いてきた。実は台風の大雨の後雨漏りがしているのだが、と言うと早速屋根裏に入り込んでその場所を確認、担当者は、これは保険でカバーできるので、保険会社の指定する業者に見積もりをやらせる。下りる保険金額はまた連絡する。なお、実際の修理は、こちらの選択でよいので、保険会社は特にこだわらない、ということだった、

その後担当者から下りる保険金額の連絡がきたので、この家を建てた時に屋根をふいた板金業者が今はその息子が後を継いでいたので連絡をして見積もりをとってみたら、保険会社の見積もりとほぼ同額だった。結局、保険金で、屋根の葺き替えが出来ることになった。その板金業者は自分の家のことはよく知っていたので、妥当な価格で屋根を全面的に葺き替えをしてくれたのかもしれない。従って最初の塗装業者の仕事は3年ももたなかったことになったのだが、結局は特に大きな問題もなく、雨漏りも解消できた。

その、塗装業者が持ってきた浜菊は、2年ほど前、植えてあったフクシア(イギリスではヒューシャと呼ばれ、パブの入り口のハンギングバスケットの中などでも咲いていた、なじみのある花)が枯れてしまったので植え替えてみたところ、今度はぐんぐん大きくなって今年は大振りな花をたくさんつけた。あの社長の言ったとおりになって来たようだ。ここまでになるのにほぼ8年かかった。見ると浜菊の花にはまだ蜂が蜜を吸いに来ている。浜菊は英語ではNippon Daisy、原産地は勿論日本、花言葉の一つが「逆境に立ち向かう」とある。これは、あの塗装業者が3年と持たずに葺き替えをしなければならないことを予感していたからなのか、あるいは、6年間も小さな鉢に閉じ込められて今咲き誇ることになったこの花のことを言っているのか。簡素な花で、庭の中では今の時期それなりに存在感を放っている。

 

 

コメント (2)
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