回顧と展望

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ブラックホール

2021年01月16日 14時37分35秒 | 日記

1989年に出版された、スティ―ヴン・ホーキング著「ホーキング、宇宙を語る ビッグバンからブラックホールまで」(早川書房)を読んだ。二度と読むことはないのに、買った本を捨てることが出来ないのでいつの間にか本棚の下の方に埋もれてしまうのがたくさんある。

今回は別の本をさがしていたら、この本が偶然目にとまった。確かにこの本に見覚えはあるものの内容については何も思い出せない(記憶力の減退)。それで改めて読み始めたのだが、そもそも小説のように初めからはっきりしたストーリーがあるものではなく、当時最新の物理学のなかで、一般の人が興味を持っているであろうことを項目別に取りまとめたものなので記憶に残りずらいと言える(言い訳だが)。またその内容も物理学(それも宇宙物理学)と言うことで、読んでいる瞬間は少し判ったような気になっても実際のところ本当に理解していたのかは甚だ疑わしいから、読み始めると新鮮に感じて止められなくなった。

この本の最初の方に書いてあるが、この本にでてくる数式や物理学の記号と言うものはたった一つ、アインシュタインの有名な公式E=mc²だけである。彼によれば、数式が本の中に一つ出るだけで売れ行きが半減する、ということだ。それほど、数式のようなものを見ると拒否反応を示す人がいるらしい。

とにかく、宇宙は自己完結的であり、始まりも終わりもなくただ「存在するだけ」と言うこの本の結論は面白い。それを数式などを使うことなくいくつかの図形を示し後は文章での説明によっている。数式を見ただけで頭が痛くなるものにとってはこれほど分かりやすいものはない。何度か文章を読み直せばいくらかは理解できるからだ。だから、数式に弱いからと言う言い訳もできない。

2018年に死去したホーキングは、近代科学の巨人としてロンドンウエストミンスターアビーに葬られているアイザック・ニュートンやその他の著名な科学者と並んで埋葬されている。しかし、この本の中でのホーキングのニュートン評は、同じ学者でありながらも極めて批判的だ。ニュートンが、世俗的な成功に加えて「その邪悪な容赦せぬ才能をもって…何人かの男を絞首台に送って処刑することさえした」とまで酷評している。

なお、この本が出版された時に、サルマン・ラシュデイ(悪魔の詩、でイスラムから死刑を宣告された作家)の書評がイギリス・オブザーバー紙に掲載された。一言で言えば、ホーキングおよびこの本に対して皮肉たっぷりに酷評している。世界的なベストセラーになったこの本に対してラシュデイが嫉妬でもしたのか、と思わせるようなものだ。

最近、ホーキングが患ったALS(筋萎縮性側索硬化症)に注目があつまっている。幸い彼の場合は進行が遅く、76歳まで生きて多くの物理学上の研究成果を残した。たまたまだが、同期で入社数年後にALSを発症し、確か30歳にならないうちに亡くなった男がいた。彼は仕事を辞め、父親が経営していたゴルフ場の仕事を手伝っていたが・・・。言ってみればALSはブラックホールのようなものだ。一度発症したら今のところ抜けだす道はない。人生のブラックホールに落ち込まないようにしなければ。

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