週末自宅にいると固定電話(今頃まだそんなものを持っているのか、と言われそうだが)に売り込みの電話が架かってくることがある。今やどの電話機でもそうだろうが発信人の名前が表示されるので、それを見てからとることにしていて、それ以外の発信人の場合には普段は電話機に応答させている。相手が名前を名乗ってから、それによってはその時点で電話機が断りのメッセージを流す(一度親しい友人にこの手順で応対したら、ずいぶん慎重なんだな、と言われたことがあったが)。こういう便利な機能がついてからはいわゆるセールスの電話などでの不愉快な会話をしないで済むようになって助かっている。
今日の電話は、相手の名前を訊くと良く知られた不動産会社を名乗る。また先方の電話番号(携帯番号ではない)が表示されていたので、特に思い当たる節はないが、長野県や相続した北海道の不動産もあり、ひょっとして何か関係でもあるかと思って受話器を取ってみた。結局は今住んでいる都内の不動産を売る気はないかと言うことで、そのような予定はないというとすんなり引き下がった。
週末にまでこういう売り込みをしている不動産会社もご苦労なことだ。在宅勤務が増えて家の買い替えを考え始めたひともいるのだろうか。「今ならとても高い値段で売れますよ」という常套句だったが深入りするのは避けようとそれ以上の会話はしなかった。しかし、考えてみると、自分もいつかは不動産を処分しなければいけない時が来るはずだ。もちろん放っておけばあとは法律に従って処分(あるいは相続)されるのだろうが。ただ、住んでいた家が荒れ果てたり、知らない他人が処分していくのを想像するのは余り愉快なことではない。
そんなやりとりの後居間の飾り棚をみたら、ギリシャで買った壺が目に入ってきた。一つは酒の神バッカスが描かれたアンフォラ。もう一つは豊饒を司る女神だろうか。いずれも紀元前の壺の模造品。そういえばこの壺を買った時、土産物屋の店員が「これは実に古いものです。なぜなら、この壺の裏には「BC450」と彫られていたのですから間違いありません」と。紀元前の人間がタイムマシンにでも乗って時空を超えて西暦元年を知ったのだろうか。こういう場面では実に愉快な冗談ではあるが、やはりセールスとなるとこれくらい荒唐無稽、無邪気な気持ちが必要なのかも・・・しかし、強引かつ狡猾な詐欺師の暗躍する昨今、余裕を持っているようなふりをしていると痛い目に合うかもしれない~。