回顧と展望

思いついたことや趣味の写真などを備忘録風に

執事!!

2021年01月13日 17時58分12秒 | 日記

イングランドのほぼ中央部にあるシェフィールド(Shefield)市は人口60万人弱、イギリス第5位の大都市で、銀食器の生産地として日本でも知られているところ。ここは産業革命以来、イギリスの重工業を支えてきた都市だが、主要産業の衰退に伴って長く低迷した時期があった。しかし最近では名門シェフィールド大学が学術面で存在感を示している(ノーベル賞受賞者が6人!)ほか、サッカーチームの強豪もいくつか抱えてているなど、すっかり元気を取り戻しているようだ。

ロンドンに駐在しているときにはいろいろな機会に自宅に客を呼んでの食事接待をすることが多かった。普通は、家に備え付けの食器でもてなすのだが、どうしても自分の趣味に合わないものもあって、そのうちに自然と食器を買うことになる。イギリスの場合、皿などの陶磁器であればその生産地はロイヤルドルトン、スポード、ウエッジウッドやミントンなどのブランドで知られるストーク=オン=トレント (Stoke-on-Trent) になるし、ナイフやフォーク、スプーンなどの銀食器であればシェフィールドと言うことになる。毎年少しづつ、最後に何とか、8人程度までの会食であればどうにか出せるだけの食器は一応揃えることができた。因みに、シェフィールドの銀食器(Silverplated)では、その銀の厚さによって保証期間が15ミクロンで20年、20ミクロンで35年間、35ミクロンで50年間、40ミクロンで70年間と言う具合に違いがある。もちろん、厚い方が銀の使われている量が多いので高価になる。

その食器、イギリスに駐在していた間は、時々は出番もあったのだが、ニューヨークに転勤してみると、ここでは少し改まった食事は外のレストランと言うのが普通であり、また、仮に自宅での食事となる場合はどちらかと言うとカジュアルなパーティー形式になって食器も紙製などの使い捨ての物が使われることが多く、イギリスで買った食器の出番はほとんどなくなってしまった。

自分のことで言えば、日本でもめったにこういった食器を使うことは無い。ところがこの正月、たまたま知人を家に招待して簡単な食事をすることになり、食器棚の奥にしまい込んであった懐かしい食器を出してみた。陶磁器の食器は全く問題なかったが、銀食器の一部とトレーには変色や黒ずみが。大急ぎでシルバークリーナーで磨く羽目に。幸い、簡単に変色や黒ずみがふきとれたので、どうにか事なきを得た。

こうして慌てて変色したり黒ずみの出た銀食器をみがいていたら、一体にこのような仕事は、屋敷の主人でなく、執事が空いた時間を見つけて手際よくやるものではないかと思えてきた。そうだ、身の丈に合った、ということからすれば、自分は客を迎えるという主人の役柄よりも、食器を磨く執事の方がふさわしいのではないか~。

そういえば、手元の銀食器のブランドをみると「George Butler of Shefield」となっている。このブランド、Butler(執事)のいるような屋敷にこそふさわしいものだと言っているのだろうが、今の自分はこの食器を磨くButler(執事)のほうふさわしいようで、何か皮肉な話。

ところで先日、テレビの番組で俳句会を主催している俳人が各地の盛り場の気の置けない居酒屋に顔を出すという番組があった。この俳人は、いわゆる「マイ箸」を持参しているという。酒の肴をつまむときには持参した箸でということらしい。放映されていたのはかなり以前に録画したものだが、今は特にコロナの感染防止が叫ばれているところ、こういった「マイ箸」のアイデアは時流にかなっているのかもしれない。それに、もし家に食事に呼んだ参加者が「マイ箸」を持ってくるようになったら、もはや銀食器などの出番はなくなるのでは・・・

ただ、和食の場合、箸は万能でどんな食べ物にも使えるものだが、洋食となると、肉料理、魚料理、デザートなどで食器を使い分けなければならない。そういった場合、「マイ・カトラリー」持参と言うのは客には酷な話かもしれない・・・

コメント (2)
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