別に断捨離と言うわけではないが、このところ引き続き暇を見つけては家の中の整理をしている。出張や旅行で買った物や知人友人から贈られた物はこれまで時間が無く大抵はそのまま本棚の中に押し込んであった。このところは少しでも外出を自粛しようということで、今までになかった時間が出来てきたように思う。
それで今回出て来たのが、フラゴナールの絵を取り入れた絵皿。不思議なことに、いつ、どのようにしてここにあるのか記憶が全くない。バイエルン州のBMW かAudiの本社に行った時に買ってきたのかもしれない。正直、このKleiberと言う窯元(?)の知識もなく・・・
ジャン・オノレ・フラゴナール(Jean Honoré Fragonard)はフランス、ロココ絵画の巨匠としてよく知られている。先日、ニューヨークを代表する美術館フリックコレクションが行っている、YOUTUBEで学芸員が同館所蔵の絵画について講演しているのをみていたら、この美術館の主要展示物のひとつにフラゴナールがフランス・ルイ15世の愛妾、デュ・バリー伯爵夫人(Jeanne Bécu, Comtesse du Barry )に依頼されて作成し(1773年)、しかし、彼女の不興を買って返却されたという「恋の成行」他連作物の4枚の絵の話が取り上げられていた。
デュ・バリー伯爵夫人はその20年後、フランス革命の最中、マリー・アントワネット処刑の直後の1793年暮れに断頭台の露と消えた悲劇の女性である。彼女は今、パリの贖罪礼拝堂(シャペル・エクスピアトワール、Chapelle expiatoire)で革命で命を落とした多数の人々とともに薔薇の花の下に眠っている。
一方でデュ・バリー伯爵夫人から絵を返されたフラゴナールは、革命こそ生き延びたものの、その後の政治体制とロココ絵画の衰退の中で不遇を囲い、失意と困窮のうちにこの世を去り、モンマルトルの墓地に名もなく埋葬された。この二人の栄枯盛衰、不幸な最期、ある意味でいかにもロココ風かもしれない(この絵皿の二人が彼等らと言うわけではない)。
コロナ感染拡大が止まらないニューヨークは未だに劇場や美術館は閉鎖されたままだ。当面、この4つの大作を目にすることは出来ないだろう。
デュ・バリー伯爵夫人の眠るシャペル・エクスピアトワール