晴徨雨読

晴れた日は自転車で彷徨い、雨の日は本を読む。こんな旅をしたときに始めたブログです。

雨読 「とちぎの地名を探る」(2) 9/8 

2010-09-08 | 雨読

2010.9.8(水)曇、雨

 台風の雨が夕べから続いている。8月1日以降2度ばかりお湿りがあったのだが、本格的な雨は初めてだ。もう大地はカラカラに乾ききっているだけに恵みの雨というところだ。花木に水遣りをしなくて良いと言うことが、これほどありがたいことだとは思わなかった。
 前号では金属地名を例に出して、ひとつの意味だけでなく別の意味もあるということを紹介した。これはひとえに漢字表記のなせる技であることがわかる。もともと文字を持たず口語のみであった古語が漢字の輸入により表記されるようになった。漢字は一つひとつの文字が意味を持つため本来の意味とまるで違った解釈が生まれるわけだ。本書では各地名について、説話や伝説が紹介してある。そしてそのほとんど総てが附会されたものであることが解る。例えば上林にもいくつかある「殿」地名の例を挙げてみよう。
 鹿沼市上殿町について、「一説は鎌倉期に鹿沼権三郎の功臣がこの地に出城を持ち、その主を上殿と尊称したところからと伝えられ云々」と説を紹介している。ところが「殿(トノ)は棚(タナ)の転で棚状の地、段丘のことか」とある。なるほど建物などで高殿とか言うなあと納得する。殿の字に惑わされてはとんでもないことになる。
 タイトルにもある県名「栃木」についても、栃ノ木が繁茂していたからという俗説を一蹴している。私の所有する間抜けな日本地名ルーツ辞典にはそのように書いている。本書では「ト・チギ」という地名で、トは接頭語と解してよかろう。チギは動詞チギル(千切る)の語幹で細かく粉砕するとか、もぎ取るの意から浸食、崩壊地形に由来するのだろうと解説している。
 上林の老富町にある、栃の地名については鹿沼市の栃窪の例を挙げて、栃は閉、トズの転と説明している。老富町の栃を航空写真で見ると、なるほどと思い当たることとなる。Img_1312

老富町栃、岡林信康さんの歌で有名なみのだ橋。


 このように浸食、崩壊地形を主に編集されているので、動詞、形容詞からの転訛が圧倒的に多く、地名のひとつの見方だろう。氏の主題は危険な場所を乱開発して宅地化し、人災を引き起こしている現状に警鐘を鳴らすものである。

【作業日誌 9/8】
薪割り2玉

今日のじょん:台風が過ぎて涼しくなったので、やっとジローが遊びに来た。もう大喜びではしゃぎ廻っていた。Img_1325

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雨読 とちぎの地名を探る(1) 9/7

2010-09-08 | 雨読

2010.9.7(火)曇

 「とちぎの地名を探る」塙 静夫著 1996,11 随想社刊 1,854円(購入価1,160円)
 なぜ栃木なのかという感も持たれようと思うが、栃木は関西人にとってはもっとも縁の薄い地であるが、毛野国といわれ古代においては蝦夷の文化圏に入り、古代地名については大変興味深いものがある。そしてなによりも1986年の集中豪雨による大水害の被災地を調べたら、古代の居住地はひとつも入っていなかった、つまり地名は自然災害に対する居住の適性を表しているのではいう著者の主題が気に入ったわけである。勿論こういう主題で「京都の地名を探る」というものが出版されていたらそちらを購入するだろう。遠く離れた東国の地と同様の地名が丹波のこの地にもあったなら、地名の普遍性ということが確認できようというものである。Img_1326
 山の名前、金属地名から地名探究の世界に入ったわたしにとっては、独断的な解釈をしていたなあと反省させられる書ともなった。その例をいくつか紹介しよう。

 「入」 谷や河川の上流を指す地名。イリと読むのだが、これをニュウと読んで水銀地名ではという考えを持っていた。もちろんそうなる場合もあるのだろうが、入地名を地形図で見てみると、本書の説が一般的である。上林でも武吉に浦入、真野にイカ入という小字がある。浦入は川沿いの平坦地にあり入(イリ)を意味しない、むしろ南にある東浦と関連づければ何か解るかもしれない。真野のイカ入(イカイリ)は地図で位置が確認できないので何とも言えない。

 「鍛冶・梶」 綾部市の鍛冶屋町は著名、この地は鍛冶職人の地と言われている。刀剣の名工も居たそうだ。鍛冶屋谷、鍛冶屋などは鍛冶に由来する場合が多いが、中には動詞カジル(囓、掻)から崖などの崩壊地名もあるので、周囲の状況などから判断しなければならない。なお、よくあるカナクソ地名(金糞、金屎)などは鉄滓のことで、鍛冶に関係するのは間違いないだろう。Img_4615

鍛治屋町は里山ネットのあるところ。

 「菅」 菅(スガ)は鉄の古語ですぐに産鉄の地を思い浮かべるのだが、足利市菅田町(すげたちょう)をあげて、スゲは動詞スゲル(插)の語幹で差し込まれた地形、篏入した地形を表す、とある。一概に菅=鉄と考えてはいけないようだ。五泉町の市之瀬の菅坂は鉄に関係するものと考えている。ちなみに市之瀬には鍛冶屋谷、カジヤ谷もある。Img_4298
 
左の凹みが菅坂峠。


 「多田羅」 タタラ(多々良、多々羅など)と来たら蹈鞴だろうと製鉄、野鍛冶を思わせるのだが、そうでない場合もある。ここで言う市貝町多田羅は、「タタ・ラ(接尾語)」でタタは動詞タタク(叩、敲)の語幹とし、小貝川の氾濫で浸食を受けた地形とされている。上林にはタタラ地名は見受けられないが、下矢田町には多々良があり、イモジ山、鍛冶屋、芋谷、鍛冶大瀬谷、釜ヶ迫などの金属地名と思われる地名も多くあるので、本来の鉄に関する地名だろうと推測される。つづく

【作業日誌 9/7】
薪割り、玉切り
干しネギ植え付け

今日のじょん:暑さで弱ってるのは草木ばかりでなく、かみさんもじょんもかなり弱ってそうだ。じょんは気温が下がればすぐ元気になるが、人間はなかなかそーはいかない。みんな元気になってくれ、こちとらまで気が滅入りそうだ。Img_1314

リードは固定しなくてもじっとしているのが面白い。

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