晴徨雨読

晴れた日は自転車で彷徨い、雨の日は本を読む。こんな旅をしたときに始めたブログです。

雨読 「維新の影」

2018-10-21 | 雨読

2018.10.21(日)晴れ

 「維新の影」近代日本150年思索の旅 姜 尚中著 集英社 2018年1月第一刷 借本

 本書は共同通信が配信して、優れた地方紙27紙に連載されたものを加筆修正して出版されたものである。京都新聞に掲載されたものを数部切り抜きしていたが、まとめた新刊が発行されたと新聞の読書欄で見つけて読んだものである。

 今年が明治維新から150年ということで各地でイベントが開催され、政府肝いりのセレモニーなども行われるようだ。序章においてそのあり方を書いておられるが、姜先生の文章は難しくて一言で言い表せない。わたしなりに解釈すれば、政府の思惑は明治維新以降の政治経済の日の当たる部分のみを強調し、本来将来に活かすために大切な影の部分を無視しているということではないだろうか。タイトル「維新の影」がそのことを物語っている。明治維新以降日本が歩んだ「富国強兵、殖産興業」政策の結果が先の大戦であり、その錦の御旗の下で国民は封建時代をもしのぐ辛酸をなめてきたのである。
 沖縄県糸満市、長崎県端島炭鉱跡、熊本県菊池惠楓園、水俣市、福岡県三池炭鉱跡と北上する旅路をみれば先生が何を書こうとしておられるか想像できるだろう。神奈川県津久井やまゆり園、福島県福島第一原発、秋田県大潟村など最近の事象も辿り、最後は北方四島を望む北海道野付半島で終わる。その章のタイトルが「仄かな光に宿る希望-「野蛮の記録」を告発」というものである。「野蛮の記録」というのは勝者による歴史である。そして希望とは何だろう。
 それは、日本の近代の、そして戦後の単なるエピソードでもなければ、懐古的に綴られる過去の出来事でもない。それは、150年の時空を超えて今も変わらず続いている「野蛮の記録」を、沈黙のうちに告発し続けているのである。
 今回内容については書いてないが、是非読んで頂きたい一冊である。あやべ図書館にあるので是非。

【今日のじょん】久々にモモちゃんが来たので大喜び、おかあがおやつくれるのでなんとよい子ちゃんだこと。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする