夜は宴会である。対岳荘の広間を使わせてもらい、食べ物も用意してくれた。美味そうなおつまみがテーブルに並ぶ。
この晩のメインは生バンドだ。バンド名は『西飛山ブルースハウス』。3年前に僕が居た時にできたバンドだ。
西飛山はスキー場がある地名だ。スキー場にスタッフ用の寮があり、夜な夜なギターを抱えて酒を飲む、という日々だった。誰が言い出したか忘れたが、その時についた名前だ。
僕とJCとは十年来、一緒にいろいろとやっている。音楽も非常に重要な位置にあり、あちらこちらのスキー場でいろいろな人とバンドらしい事をやってきた。
パトロールでちょっとギターを弾ける人がいたり、ベースを持っているなどという人がいると強引にひきずりこんでバンドにした。
基本的にJCがギターを弾いて唄い、僕がハーモニカを吹く。あとはその場に居る人、興味がある人を探すのだ。
能生でも同じでハヤピがベースを弾ける、テツが昔エレクトーンをやっていた、と聞くと有無を言わさずバンドに巻き込んだ。地元の機械屋さんがドラムを叩ける、電気屋さんがギターを弾けるというのでこのバンドができた。
去年、彼らのライブを聞いて、あまりの仕上がりの良さに驚いた。そして自分もこの中で演奏したいと思った。その夢が実現した。
曲はJCのオリジナルがほとんどだ。新曲のスイートパラダイスもやった。
去年JCがニュージーランド西海岸を旅している時に、車が壊れてヘイリーの家に転がり込んだ。その時できた歌だ。僕は曲の合間にヘイリーに言った。
「これはオマエの家でJCが書いた歌だぞ」
そして詩を訳してヤツに伝えた。数千キロ離れた家や家族のことを思い出したのだろうか。ヤツは遠い目をして歌を聞いていた。
そしてトリは『また会えるさ』JCと出会った時に生まれ、年を追い旅を重ねるうちに定番となった唄だ。
僕らは季節労働者である。冬が終り春が来ると雪山を去り、あるものは雪を求めて南半球へと飛び、あるものは夏の海へ向かう。そして次の雪が降る頃、山に帰って来るのだ。
今年仲良くなったヤツに来年会えるとは限らない。ヤクザな仕事に愛想をつかし、堅気な道を選ぶ友達も少なくない。思いがけない人と思いがけない場所で出会う時には世界は狭いなあと思う。
そんな渡り鳥のような僕達のための唄だ。
旅の終りはいつも虚しくて誰かと一緒に 気の合う仲間と Oh Yeah
みんな自分の季節があり それぞれに流れてる 気の合う仲間と Oh Yeah
何処に帰るか知らないが 戻る所があるのか 何処か遠くへ Oh Yeah
交すアドレスは要らない
いつもの笑顔で別れよう
見えなくなるまで手を振ろう
君の笑顔が小さくなるよ
次の季節にここで またここで会えるさ 土産話をたくさん作ろう
次の季節にここで またここで会えるさ それまで自分の旅をしよう
風は水辺に波を 太陽はゆっくり背中を 今日も同じに Oh Yeah
子供は笑い走り過ぎ 大人は静かにそれを見る 僕もここに Oh Yeah
交すアドレスは要らない
いつもの笑顔で別れよう
見えなくなるまで手を振ろう
君との思い出大きくなるよ
次の季節にここで またここで会えるさ 今日と同じ空の下で
次の季節にここで またここで会えるさ 忘れない君のことを
アンコールは僕とJC、2人で『ああどうすりゃいいんだ』
アライで働いていた時、JCが女に振られ、坦々麺に胃をやられ、文字通り身も心もボロボロになってできた唄だ。その時僕はヤツの憔悴ぶりを見ながら『なるほど、詩はこうやってできるものなんだ』と感心したものだった。
ヤツとの付き合いは長いが、2人でじっくりとこうやって演るのは久しぶりだ。そんな僕の思いをぶち壊すようにハーモニカが壊れてしまった。音は出るが幾つかの音の調子が外れてしまった。何とか曲を終えて言葉を交す。
「ハープ壊れちゃったよ」
「そうだね」
「まあ、最後の曲でよかったよ」
「ホントだよ」
「だけどすげえ楽しかったなあ」
「んだどもやあ」
バンドの後も宴は続く。
誰かが僕らのためにケーキを焼いてくれた。
デコレーションには真ん中に今回のイベントのマスコットでもある雪だるま。その周りにクッキーでBroken River Weekの文字が。
こういう行為はとても嬉しい。作り手の愛が伝わってくる。
いろいろな人の好意で、僕らの旅は成り立っている。
胸が熱くなった。
宴もピーク過ぎ、そろそろお開きという時に誰かが言い出した。
「じゃあビシッと締めようよ」
「ブラウニー、1本締めだ」
「いいぞいいぞ、ブラウニーやれ」
「お手を拝借って言うんだ。それで、パンと叩く」
「オテオハシャク」
「お手を拝借だよ」
「オテオハシャク」
「いいじゃんいいじゃん、それでいこうよ」
「オテオハシャク、ヨーオ!」
パン!
この晩のメインは生バンドだ。バンド名は『西飛山ブルースハウス』。3年前に僕が居た時にできたバンドだ。
西飛山はスキー場がある地名だ。スキー場にスタッフ用の寮があり、夜な夜なギターを抱えて酒を飲む、という日々だった。誰が言い出したか忘れたが、その時についた名前だ。
僕とJCとは十年来、一緒にいろいろとやっている。音楽も非常に重要な位置にあり、あちらこちらのスキー場でいろいろな人とバンドらしい事をやってきた。
パトロールでちょっとギターを弾ける人がいたり、ベースを持っているなどという人がいると強引にひきずりこんでバンドにした。
基本的にJCがギターを弾いて唄い、僕がハーモニカを吹く。あとはその場に居る人、興味がある人を探すのだ。
能生でも同じでハヤピがベースを弾ける、テツが昔エレクトーンをやっていた、と聞くと有無を言わさずバンドに巻き込んだ。地元の機械屋さんがドラムを叩ける、電気屋さんがギターを弾けるというのでこのバンドができた。
去年、彼らのライブを聞いて、あまりの仕上がりの良さに驚いた。そして自分もこの中で演奏したいと思った。その夢が実現した。
曲はJCのオリジナルがほとんどだ。新曲のスイートパラダイスもやった。
去年JCがニュージーランド西海岸を旅している時に、車が壊れてヘイリーの家に転がり込んだ。その時できた歌だ。僕は曲の合間にヘイリーに言った。
「これはオマエの家でJCが書いた歌だぞ」
そして詩を訳してヤツに伝えた。数千キロ離れた家や家族のことを思い出したのだろうか。ヤツは遠い目をして歌を聞いていた。
そしてトリは『また会えるさ』JCと出会った時に生まれ、年を追い旅を重ねるうちに定番となった唄だ。
僕らは季節労働者である。冬が終り春が来ると雪山を去り、あるものは雪を求めて南半球へと飛び、あるものは夏の海へ向かう。そして次の雪が降る頃、山に帰って来るのだ。
今年仲良くなったヤツに来年会えるとは限らない。ヤクザな仕事に愛想をつかし、堅気な道を選ぶ友達も少なくない。思いがけない人と思いがけない場所で出会う時には世界は狭いなあと思う。
そんな渡り鳥のような僕達のための唄だ。
旅の終りはいつも虚しくて誰かと一緒に 気の合う仲間と Oh Yeah
みんな自分の季節があり それぞれに流れてる 気の合う仲間と Oh Yeah
何処に帰るか知らないが 戻る所があるのか 何処か遠くへ Oh Yeah
交すアドレスは要らない
いつもの笑顔で別れよう
見えなくなるまで手を振ろう
君の笑顔が小さくなるよ
次の季節にここで またここで会えるさ 土産話をたくさん作ろう
次の季節にここで またここで会えるさ それまで自分の旅をしよう
風は水辺に波を 太陽はゆっくり背中を 今日も同じに Oh Yeah
子供は笑い走り過ぎ 大人は静かにそれを見る 僕もここに Oh Yeah
交すアドレスは要らない
いつもの笑顔で別れよう
見えなくなるまで手を振ろう
君との思い出大きくなるよ
次の季節にここで またここで会えるさ 今日と同じ空の下で
次の季節にここで またここで会えるさ 忘れない君のことを
アンコールは僕とJC、2人で『ああどうすりゃいいんだ』
アライで働いていた時、JCが女に振られ、坦々麺に胃をやられ、文字通り身も心もボロボロになってできた唄だ。その時僕はヤツの憔悴ぶりを見ながら『なるほど、詩はこうやってできるものなんだ』と感心したものだった。
ヤツとの付き合いは長いが、2人でじっくりとこうやって演るのは久しぶりだ。そんな僕の思いをぶち壊すようにハーモニカが壊れてしまった。音は出るが幾つかの音の調子が外れてしまった。何とか曲を終えて言葉を交す。
「ハープ壊れちゃったよ」
「そうだね」
「まあ、最後の曲でよかったよ」
「ホントだよ」
「だけどすげえ楽しかったなあ」
「んだどもやあ」
バンドの後も宴は続く。
誰かが僕らのためにケーキを焼いてくれた。
デコレーションには真ん中に今回のイベントのマスコットでもある雪だるま。その周りにクッキーでBroken River Weekの文字が。
こういう行為はとても嬉しい。作り手の愛が伝わってくる。
いろいろな人の好意で、僕らの旅は成り立っている。
胸が熱くなった。
宴もピーク過ぎ、そろそろお開きという時に誰かが言い出した。
「じゃあビシッと締めようよ」
「ブラウニー、1本締めだ」
「いいぞいいぞ、ブラウニーやれ」
「お手を拝借って言うんだ。それで、パンと叩く」
「オテオハシャク」
「お手を拝借だよ」
「オテオハシャク」
「いいじゃんいいじゃん、それでいこうよ」
「オテオハシャク、ヨーオ!」
パン!