サービス開始から1年7カ月。18日、日本発の無料通話・メールアプリ「LINE」の利用者数が世界で1億人を超えた。うち4100万人が日本のユーザーで、海外比率は約6割。運営するNHN Japan(東京・渋谷)の本社では、役員・社員が社内カフェに集まりカウントダウンイベントを開催。森川亮社長は「1億は単なる通過点。世界へ挑戦するための切符を手に入れた」と語った。ついにフェイスブックとの直接対決が本格化する。
「LINE」の利用者数1億人突破で笑みを見せるNHN Japanの森川亮社長(左)と舛田淳執行役員(18日、東京都渋谷区)
過ぎてしまえば、その瞬間はあっけなかった。午後2時40分過ぎ、NHN Japan本社が入居する東京・渋谷の複合ビル「ヒカリエ」の27階。前方スクリーンのカウンターが1億を超えると、集まった社員が一斉にクラッカーを鳴らし、歓喜の声が湧いた。スタッフが次々と挨拶をした後、この日のために2週間前から海外ロケを敢行したというビデオが流れた。
■「こんなチームは、恐らく世界中探してもない」
「LINEしかやらない」「みんなやってる」「(大きな絵文字の)スタンプで感情を表現できるのがいい」「(スタンプキャラクターの)ジェームズが大好き」……。
1億人突破を記念したビデオが流された。LINEの特設サイトやユーチューブでも見ることができる
東京・ソウル・ニューヨーク・バンコク・バルセロナ・台北の各地で見つけた通りすがりのLINEユーザーが次々と登場し、LINEへの思いを語る。いつの間にか日本発のLINEがグローバルサービスとなっていたことを印象づけるビデオだった。
イベントの最後、LINEの事業責任者で育ての親でもある舛田淳執行役員がマイクを握る。
「2011年の年末に社内で『1億ユーザーいきます。いかせます』といった時、恐らく誰もできるとは思っていなかった。全部署が一丸となり、昼夜問わずの頑張りがあってやり遂げることができた。こんなチームは恐らく世界中探してもない。まず自分たちに拍手を!」
そう皆で自らをたたえると、「LINEはこれで終わりではない。まだ進み続けている。世界展開を進め、さらに成長する。その思いを込めて一本締めで終えたいと思います」とまとめた。
■米フェイスブックより約3年も早いペース
LINEがサービスを開始したのは11年6月23日。最初はテキストメッセージのみだったが、同年10月に無料通話機能とスタンプ機能を追加した。これを機に日本のみならず、中東、台湾、東南アジア地域でもユーザーが伸び始めた。
12年に入ると、ロシア周辺諸国やスペイン・チリ・メキシコなどスペイン語圏へと拡大。昨年7月末に5000万人を突破して以降も週間約300万人のペースで伸び続け、サービス開始から19カ月目で1億人を超えた。日本発のインターネットサービスで1億人を突破したのはこれが初めてだ。
世界最大のSNS(交流サイト)の米フェイスブックより約3年も早いペース。1億人突破までツイッターは49カ月、フェイスブックは54カ月かかった。
スマホの普及を追い風に、世界の巨人を上回るスピードで1億突破を成し遂げたLINE。ここからは、ついにフェイスブックとの直接対決という新たなフェーズに入る。
フェイスブックは今年に入ってから、LINEが押さえる市場を本気で狙い始めている。
■フェイスブック、無料通話アプリ市場に参入
「音声を録音」機能が付いた日本向けの「フェイスブックメッセンジャー」の画面。近いうちに通話機能も追加される予定
LINEはスマートフォン(スマホ)に特化し、1対1、あるいはグループ内での閉じたコミュニケーションツールとして爆発的な成長をたどってきた。一方で、世界10億人を超えるフェイスブックを日常的なコミュニケーションツールとして利用するユーザーも多い。すでにスマホ向けには「フェイスブックメッセンジャー」というアプリを提供している。
フェイスブックは今年初め、このアプリを大幅に強化した。1月4日には録音した音声を送信できる「ボイスメール」機能を追加。カナダのみ先行で「無料通話」機能も使えるようにし、テストしていた。16日に米国向けiOS版アプリでも無料通話機能を追加すると、「一夜にして最大の無料通話アプリ事業者になるかもしれない」と評する米メディアも現れた。
無料通話機能は北米以外の国でも数週間以内に追加される見込み。近いうちに日本でもフェイスブックの友だちへ無料で電話がかけられるようになる。つまり、「スタンプ」以外の機能はLINEと並ぶ。
■LINE、北米に事業拠点を設立
やっかいなことに、LINEはアジア地域や欧州、南米の一部では強いが、北米では弱い。北米の無料通話・メールアプリ市場では「WhatsApp」というアプリが最もユーザーを抱えており、LINEは後じんを拝している。ここにフェイスブックが本腰を入れ始めたから、競争環境はより厳しくなっていくことは必至だ。
むろん、LINE陣営も手をこまぬいているわけではない。
フェイスブックのスマホ向け無料通話参入について、舛田執行役員は「予想通りというか、(フェイスブックが)やらないわけはないですよねという感じで、あまり驚いてはいない」と、いつもの涼しげな顔を崩さない。
逆に、LINE陣営は今春にも米ロサンゼルスに事業拠点を設立する計画。フェイスブックの本拠地である北米市場で攻勢をかける構えだ。「こういった機能や体験があった方がいいよね、というのをリモートではなく、現地の人間が空気を感じて進めていく。そのために拠点をつくる」
■始まった第2幕、「次は3億、5億、10億」
森川社長(左)と舛田執行役員は次の戦いを見据えている
米国だけではなく、台湾やタイなどLINEが強い地域にも順次、事業拠点を構えるとする。「フェイスブックとの戦いについて自信のほどを」と突っ込むと、森川社長はこう答えた。
「いや、相手はまだまだ巨大ですから……。僕たちはチャレンジャーなので。でも、やるしかない。いつか、ユーザー規模でフェイスブックを抜きたいな、という気持ちはある。世界を目指すというのは、そういうことなのかなと」
舛田執行役員は補足する。「次は3億、5億、10億を目指さないと。チャレンジしなければ、生きている意味がないですからね」。LINEの新たな「章」が始まった。
(電子報道部 井上理)
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