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言葉を使って自分の気持ちを表現するスキルを身につけよう

2007-07-12 | 教育




冬休み明け集会あいさつ

                                             2005年1月8日
                                           筑波大学附属高校
                                           学校長 海保博之

「言葉を使って自分の気持ちを表現するスキルを身につけよう」



●先日、筑波へ帰る時の高速バスでこんなことがありました。 うしろの座席にすわった若者がしきりに座席の背もたれをごそごそさせていました。 「うるさいなー」と思いましたが、そのままにしていました。そのうち、はっと気がつきました。僕がリクライニングにしていたのが気に入らないのではないか。最近の若者は足が長いですからね。すぐに座席を元に戻しました。果たして、うるささが止まりました。 この間、僕も後ろの若者も一言もありませんでした。 諸君は、この事態をどう思いますか。

●僕も若者も、たった一言が出ませんでした。 僕「座席を少し倒していいですか?」 若者「足がつかえます。座席をもう少し、戻していただけませんか?」 その一言がでなかったために、気まずい雰囲気になってしまいました。 こういうような状況が恒常的に続くと、うっくつしたものがお互いに蓄積されて、暴発してしまうことになりがちです。 僕「うるさい!!」 若者「椅子が邪魔なんだよ!!」 となってしまいます。

●自分の気持ちや思いを、人に向かって表現することを「自己表現」と言います。 僕も若者も、自分の気持ちを表現する力がなかったようです。
・相手に対して、
・自分の気持ちや思いを、
・言葉を使って、
・対面で表現できる
こうした自己表現力は、 今メール・コミュニケーションの時代だからこそ、 また、グローバル化した時代だからこそ、 ますます大切になってきます。

●これは、またアメリカでの自分の経験です。 研究室へ入る狭い通路をはさんで二人の教授が話をしている。まん中を通らないと研究室にいけない。話し中なので悪いからと思って、しばらくこれみよがしに、その回 りをうろうろしていたが、まったく話が終わる兆しも通してくれる気配がない。むろん、二人とも僕が通り抜けたくてうろうろしているのはわかっているはず(と自分は 思っていた)。 勇気を出して、”Excuse me ”。入れたのは2、3分たってかなり腹だたってきてからでした。

●さて、気持ち、とりわけ、ネガティブな気持ち(嫌い、いや、悲しい、つらいなど)の自己表現力で大事なことを5つほど。
1)言葉で好き嫌い,してほしいこと、してほしくないことを、はっきりと表現する  身体や表情でも気持ちは表現できます。  しかし、言葉で表現することによって、自分の気持ちが自分でもはっきりとしてき ますし(言葉の知性化機能)、気持ちが穏やかになります(言葉の冷却化機能)。  また、相手も、それによって、あなたの気持ちがはっきりとわかります。相手の気持ちがわからない不安を解消できます。
2)気持ちの表現はメールではしない  気持ちを相手に伝えたい時は、対面ですることです。  メールでは、書かれて通りに理解されてしまいます(字義通りの理解)。対面なら、言葉を補う情報が豊富にありますから、誤解も避けられます。同じ「バカ」でも 対面でなら笑い顔で言うこともできます。すぐに相手の反応がわかります。 メールでの感情表現、特に、喧嘩は厳禁です。字義通り以上に過激にとられてしまうことがあるからです。「嫌い」はますます嫌いにとられます。 メールには、さらに、微妙な時間の遅れがありますから、その間に自分の気持ちがどんどん自己増殖してしまいます。
3)僕/私表現で、自分の気持ちを伝える  感情がからんだ対話は、えてして「あなたがーー」表現になりがちです。 「きみにはいらいらさせられる」「私の気持ちを傷つけたのはあなただ」「嘘をついたのは君だろう」などなど。  これでは相手への攻撃になってしまいます。  自分はこれがしたい、これはしたくない、うれしい、つらいなどなど自分の気持ちを「僕は/私は表現」で、相手にはっきり表現します。
○「なんでそんなことをするんだ!」(あなた表現)ではなく、 「僕は、そうされるが嫌いです。やめてください。」
○「SF映画なんか、よく見るね!」(あなた表現)より 「私は、SF映画はあまり好きではなりません。いきたくない。」
○「なんで連絡してくれなかったんだ!」(あなた表現)より「連絡してもらえなくて、僕は大変不安だった。」
4)why表現,how表現を心がける  自分の今の気持ちはこうで(what)、なぜそういう気持ちになったのか(why)、 どうすればよいか(how)を話す。
○リクライニングにしないでください」ではなく、 「僕の足が座席にぶつかります(why)。リクライニングにしないでください (how)」
○「会いたくありません」ではなく、 「今、自分では、あなたへの気持ちが整理できません。1週間後なら会えるかもしれません(how)」
5)挨拶言葉、謝り言葉をやや多め目に  挨拶言葉「おはよう」「こんにちわ」「さよなら」などなど  謝り言葉「ごめん」「もうしわけない」などなど  特に謝り言葉は、対人関係をスムーズにするためには必須です。特に、相手の気持ちを少しでも傷つけたと思った時、無理なことを頼む時には、ただちに、軽く、謝る。これは、私/僕表現のあとには、必須です。 「自分は、SFは嫌いなのでいきたくない。ごめん!!」

●気持ちはできるだけ外に向けて言葉ではっきり表現することです。内にため込まな いことです。ため過ぎると、暴発します。これを、感情の通風理論と呼ぶことがあり ます。

●気持ちの自己表現の心がまえとスキルは、大人になるためには、必須の社会的スキルの一つです。

●自分の気持ちの表現について話をしてみました。 自己表現には、さらに、自分の思い、考えを表現することもあります。それも含めたもっと包括的な自己表現力を自己チェックするためのリストを1枚、 JAM「親子で育てる”じぶん表現力」(主婦の友社)からとったものを用意してみま した。校長室の前に置いておきますから、興味のある人は、持っていって自己診断を してみてください。

●では、風邪を引かないようにして、 1、2年生は、1年の締めくくりの3か月を、 そして3年生は、3年間の締めくくりの2か月を、 がんばってください。 3年生は、ただ、がんばり過ぎないように。アメリカだと、「take it easy」(気楽 にやろうよ。リラックスしてやって!)
●「”私は”という主語を書くことで、”この行動の主体は自分である”ということ を、知らず知らずのうちに、確認することができます」(渡辺康麿)
●「言葉をバカにする人は、言葉で痛い目にあう」(海保)





災害心理学 用語解説

2007-07-12 | 認知心理学
◆災害心理学(accident psychology)
災害意識、災害防止、災害後の心的ケアなどを研究する分野。
新しい分野ではないが、大規模災害やテロの発生のたびに、この分野への関心が高まる。リスク(危険)をどのように考えているか(認知)やリスク時にどのように行動するか、またどのような対策をとるべきか(リスク管理)といった問題も、これに含まれる.


寄付

2007-07-12 | 心の体験的日記
気ままに寄付をすることがある。
最近は、小銭をコンビニの寄付箱へが多い。
でも寄付は、その結果への手ごたえがまったくない。
それに対して、トイレのあちこちに、万円札を寄付は、
寄付しがいがある。
これほど大々的に報道してもらえるなんて
気持ちがよいはずである。
がんばってもっとやってほしいもの。
それにしても、そんなに騒ぐことでもないのにねー

記憶力、集中力

2007-07-12 | 教育
07・3・6海保博之

記憶力、集中力を高めるコース


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企画の趣旨

記憶は、認知心理学の主要な研究領域である.
さらに、記憶力に加えて、注意の集中力を第2単位として取り上げたのは、記憶力とは違った意味で、集中力は人の頭の働き(認知機能)の鍵となる力だからである。集中の仕方一つで、記憶、思考、知覚といった認知機能全体が強く影響を受けてしまうのである。たとえば
・ ぼんやりしていて、下車駅を通りすぎてしまった
・ 正面ばかり見ていて、脇からの車に気がつかなかった
・ 気が散って、計算間違いばかりしてしまった
さらに、集中力と取り上げたもう一つ、やや欲張ったねらいもある。
最近は、コンピュータ画面に向かっての仕事が増えている。かつてのように、鉛筆と紙と消しゴムを使った仕事とは、要求される仕事への集中度が格段に違う。よほどうまく集中状態をコントロールしないと、心も頭もやられてしまう。そんな仕事環境になっていることの認識すらあまりないのが、今の日本の職場の現状ではないかと思う。
第2単位では、そんなことにまで思いをはせながら、注意集中のコントロールについて考えてみたい。


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「記憶力を高める」
序章 記憶力ってどんなもの
0-1)記憶と社会
0-2)人の記憶とコンピュータの記憶を比較してみると
0-3)本単元の枠組

第1部 暗記力を高める
1章 暗記力とは
1-1)記憶術に挑戦する
1-2)記憶術は、暗記術
1-3)暗記術を解剖する

2章 暗記力を高めるコツ
2-1)暗記するための定型的な引き出しを作る
2-2)連合する
2-3) 連合の鎖を強固にする

第2部  貯蔵力を高める
3章 貯蔵力とは
3-1)2つの機能の異なる貯蔵庫がある
3-2)一度に取り込むには限界がある
3-3)いくらでも貯蔵できる

4章 貯蔵力を高めるコツ
4-1)知識を豊富にする
4-2)知識を使ってみる

第3部  想起力を高める
5章 想起力とは
5-1)思い出はどこから
5-2)思い出せてなんぼ

6章 想起力を高めるコツ
6-1)いろいろの思い出し方をする
6-2)思い出す手がかりを豊富にする
6-3)覚えたときと似た状況で思い出す

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「集中力を高める」

序章 集中力ってどんなもの
0-1)集中力と現代社会
0-2)集中力についての神話のいくつか
0-3)本単元の枠組

第1部 注意すべきことに注意する(注意配分力)

1章 注意配分力とは
1-1)気が散る
1-2)妥当な状況認識が前提

2章 注意配分力を高めるコツ
2-1)とらわれない
2-2)大事なものを見分ける

第2部 注意の量を加減する(注意集中力)

3章 注意集中力とは
3-1)一つのことに注意を向ける
3-2)ほかのもの、ことを無視する

4章 注意集中力を高めるコツ
4-1)出だしで気合を入れる
4-2)3割はとっておく

第3部 注意を持続する(注意持続力)
5章 注意持続力とは
5-1)集中したままの持続は危険
5-2)注意の安定供給が大事

6章 注意持続力を高めるコツ
6-1)休む
6-2)集中度を仕事の内容に応じて下げる

終章 注意管理を最適化する
7-1)集中化社会での注意管理を考える
7-2)ストレスは注意管理不全から発生する

◆ヒューリスティックス

2007-07-12 | 認知心理学

◆ヒューリスティックス(発見法)(heuristics)〔1991年版 心理学〕
問題を解くときにはアルゴリズムに従って、理詰めで一歩一歩解決に近づくやりかたと、失敗するかもしれないが、直観的に解に到達するやりかたもある。後者のような解き方をヒューリスティックスによるという。
たとえば、五目並べで、すべての可能性を読んでから次の手を決めるのがアルゴリズムに従った解決、これしかないと直観的に判断して次手を即決するのが、ヒューリスティックス。
人間は、このヒューリスティックスな解決を得意とする。ここには、制約された認知機能を有効に活用する知恵が反映されているものと思われる。しかし、ヒューリスティックスも、一定の認知的なバイアスを内在する心理論理に従うと、推論ミスが起こる。たとえば、「すべてのアメリカ人は土地持ちである。すべての土地持ちは金持ちである。ゆえに、すべてのアメリカ人は金持ちである」という3段論法は「論理的には」結論できないとするのが正解であるが、正しい推論と思い込みやすい。「すべての」という限量詞が正しい雰囲気を与えてしまうようである(雰囲気効果)。これ以外にも、たとえば、前述の例で、アメリカ人を日本人に置き換えると、結論の誤りに気づきやすいといった(思考の領域固有性)などいくつかの典型的なバイアスの存在が明らかにされている。心理論理が、過去の経験や知識に強く依存するところから起こる現象である。

暗黙知 用語解説

2007-07-12 | 認知心理学


◆暗黙知(tacit knowledge)〔1991年版 心理学〕

自動車の構造や運転の仕方をいくらことばで説明されても、実際に運転できるようにはならない。何度も自ら運転してみて、どのように運転すればよいかを意識しなくなったとき(知識の手続き化)、はじめて熟達した運転手になったといえる。

哲学者(かつては化学者)M・ポラニーは、このように、人間は語ることができるより多くのことを知ることができる、という事実から出発して、暗黙知という概念を提唱した。この概念によって、「語ることのできない」非言語的な知識は、意味を求めて現実に対して働きかける個人的で、能動的な活動の結果として形成されることを、主張した。

くたばれ、マニュアル

2007-07-12 | わかりやすい表現
02/2/26海保c「くたばれマニュアル」新曜社

*******************************************完成目次*******
3章 よき書き手がいない  7枚
   ---書き手が問題

3.1 説明力をつける

●マニュアル書きに必要な3つの力 
●知りすぎるのも問題---理解力のパラドックス
●書くときにしていること
●表現力も問題
●説明力とは
●ターゲットを絞る---説明力を高めるその1
●仮想的ユーザを作り出す
●ユーザに評価してもらう---説明力を高めるその2
●実際にはこのようにマニュアルは作られている
●心理学を役立てる---説明力を高めるその3
●ユーザに共感する---説明力を高めるその4

3.2 よき書き手を育てる

●なぜテクニカル・コミュニケーションなのか
●テクニカル・コミュニケーションの技能検定
●どこでどうやって養成するか
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3章 よき書き手がいない  7枚
   ---書き手の問題

章扉用の概要*******
 マニュアルは、技術内容をよくわかった技術者が書くのが一番よさそうだが、実はこれが、わかりにくいマニュアルを作り出してしまう一因になることが多い。専門家どうしの情報交流に慣れた技術者が、いきなり初心者に情報提供するのは無理と考えたほうがよい。どうしてなのかを、書くという行為にまで立ちかえって考えてみたい。さらに、よき書き手の養成についても考えてみる。
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3.1 説明力をつける


●マニュアル書きに必要な3つの力---理解力と表現力と説明力 
 マニュアルに限らないが、一般に、ドキュメント(文書)作りには、3つの力が必要である。
 1つは、理解力である。
 説明内容を理解する力である。当然のことだが、自分がわからないことを人に説明はできない。
 2つは、表現力である。
 文章や図表や絵を使って説明する力である。文書作りのインフラ(基盤)ではある。これだけあればよき表現者になれるかのように思われるが、そうではない。次の説明力とセットになってはじめて効果的な表現になる。
 3つは、説明力である。
 説明内容を理解できて、表現力もあるなら、完璧な文書作りができると思いがちであるが、そうではない。もう一つ、相手と相手の状況にあわせた最適な説明ができなくてはならない。これが説明力である。